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加速度センサ と 地震計

株式会社 数理設計研究所 Hal.T 2005/12/21-23
耐震診断とIT強震計
計測震度計算ソフトの解説
Index
 今まで工作機械の振動を簡易に測定する手段としてアナログデバイスの加速度センサを使ってきた。この実績を使って強震計を作成して提供することにした。
 地震計センサ部を試作して気象庁の計算式による計測震度を算出してみたところ、震度1.3〜1.4が最低震度になった。この値は残留した雑音やADCの分解ビット数からきている。計測震度にして2以上が主要なターゲットであれば実用上の問題は無い。しかし気象庁では震度1から発表しているし、計測震度0が地震が無いことを意味せず(対数スケール上の有意地震である)、震度0と震度1の感じ方としては違いがあるのが人情と言うものだと思う。
 そこでこの計測震度の残留値の低減を目指して、雑音問題を研究してみた。

問題の定義

時間と周波数軸上の雑音

 オリジナル回路は加速度センサADXLの出力を0.047uF(C15,C14,C1)で受けている。データシートの等価回路によれば内部抵抗が32kΩなので
 fc = 1/(2*π*C*R) = 105Hz
つまり帯域が105Hzにおいて-3dB。
 振動センサとしては数百SPS(サンプル/毎秒)に対応できるように広い帯域を持つままにした。

 観測信号を見てみよう。以下は実際に静かな場所において観測した値である。


 100サンプル分の信号(平均値を差し引いてある)。残留ノイズは平均的に±2、最大では±3になっている。

 この信号の周波数分析をしてみたら、100SPSで予想されるナイキスト周波数50Hzの幅いっぱいにノイズが出ていることがわかった。(横軸Hz、縦軸スペクトル)。
 
 問題は以下にリストできる
  1. ナイキスト周波数を越える信号雑音がADCに与えられているのではないか?
  2. 12ビットのADCでは分解能がたらないのではないか?
  3. センサ(ADXL)の性能とADCのバランスが悪いのではないか?
  4. 雑音低減+最低感度の向上法?
これらを実験し検討してみた。

アナログ的な雑音低減

 最初は純粋にデジタル信号処理でフィルタできないものか試みたがもともと低い帯域まで均等にあるノイズを排除することはできなかった。
 強震計として利用するので気象庁の計測震度計算式を評価してアナログ的な手法を試みた。

計算式の周波数特性をグラフにすると、以下になる。

縦軸は1Hzを基準とした相対利得、横軸はHz

 このグラフによれば1Hzに比して0.056@20Hz、0.01@30Hz、であり、20Hz以上の周波数は計測震度計算にはほとんど影響していない。そこで強震計としては20Hzに-3dBであるLPF特性にしても良いことになる。積分コンデンサを0.047uF→0.22uFにすれば
 fc = 1/(2*π*0.22uF*32k) = 23Hz
となるので、これの実験をしてみた。
 防水のための樹脂加工をしていないものについて 計算では0.22uFだが実際には0.1uFに付け替えて実験してみた。

 時系列では赤線(0.047uF)青線(0.1uF)になり、見た目にも振幅が小さくなる。

スペクトル的にも70%ほどになっている。
 コンデンサを2倍にするとスペクトルが平均的に70%になるという意味は、これがデジタイジングに起因する雑音だと言うことなのかもしれない。
 そんなわけで、0.22uFにすれば初期バージョンの半分に雑音電圧を減らせることが期待できる。計測震度はフィルタ処理など前準備を終わった後に3軸のベクトル和の強度から
 KeisokuSindo = 2.0 * log10(kg) + 0.94;
として評価する。kgはスペクトル強度に比例した値なので振幅が2倍になれば計測震度は0.6026だけ増える。
 初期バージョンの残留震度は1.3〜1.4であった。雑音電圧が半分になるならば0.6小さくなるので、センサ能力は0.7〜0.8に向上する。

【参考】 気象庁の計測震度計算のための周波数特性フィルタの計算式

デジタル的な雑音低減

 純粋になデジタル信号処理ではなく、観測環境全体を検討してみるとおもしろい。
 最初は道路雑音など周囲環境から来る振動雑音と地震信号を分離して計測震度を向上させる目的で検討を始めたが、ある意味でデジタル化するときの雑音も周囲環境として捉えることができる。
 デジタル化したがゆえの雑音は広帯域な周波数特性を持っている、スペクトラムに分解してみてもあまり特徴は見られないがいつでも一定して同じような値を持っている。原因はともかくとして周囲環境にある微少な振動エネルギーとして捉えても悪くは無いだろう、これが発想である。

 平常時(地震が無いとき)に観測した時系列信号をスペクトルに変換している。スペクトルの絶対値を適当に平均して蓄積して残留雑音とする。実際は絶対値の自乗が雑音パワーである。
 観測した地震信号も計測震度を計算するためにスペクトルに変換している、この段階で
 観測振幅 > 雑音平均 ならば
観測振幅の自乗から雑音の自乗を差し引く。つまりエネルギーとして周囲に存在する雑音成分を引いたほうが地震動にあうと考えられるからだ。
 実際にこれを計算してみると、オリジナルの状態の残留震度1.3〜1.4が0.8〜0.9になる。

結論

 総合的に、アナログ的に0.6、デジタル的な操作で0.5の改善が可能になり、残留震度1.3〜1.4が
残留震度を0.2〜0.3にすることができそうなものだが、実際は0.3〜0.4の実力となる。
 それでも四捨五入して計測震度が発表されるので、震度0からきちんと整合性のあるものとして実現できる。
 想定した疑問は
  1. ナイキスト周波数を越える信号雑音がADCに与えられているのではないか?
    ・コンデンサを0.22uFにして帯域を23Hzから上を落とす
  2. 12ビットのADCでは分解能がたらないのではないか?
    ・信号処理すれば問題は無い
  3. センサ(ADXL)の性能とADCのバランスが悪いのではないか?
    ・データシート上では分解能と残留雑音のバランスとして設計したが、16ビットにしても圧倒的な改善は無いだろう。センサそのものも高性能(高価)にすれば別
  4. 雑音低減+最低感度の向上法?
    ・信号処理が可能である

誤りの原因

原典仕様書 20041207kyousin.pdf
これの9ページ目に
5−1 性能
最大記録範囲 ±1.5G(実際は−1..7G〜+1.595G
分解能 0.001G
AD 変換器 12bit
ダイナミックレンジ 64dB
サンプリング周波数 100Hz
記録周波数特性 100Hz
遅延時間 *****
記録内容 X、Y、Z 各軸の電圧
内部時計 無し、PC 時間に依存
がある。当時も論議になったがこれのサンプリング周波数=Hzの項が問題の元凶である。

 正確にはこれをHz表記するのは好ましくない。電子技術や信号処理分野では【毎秒のサンプル数】は周波数と直結しないのだ。
 断固、これはSample/SecまたはSPSと書くべしと主張したことがある。異なる業界の間で相手の単位や呼称を安易に使うべきではないのだ。たとえ気象庁や防災関係者がHzと言おうがそんなことは知ったことではない。
 われわれは自身の世界できっちり通用する言語を使うべきであるし、言語を大事にしないものはこのような間違いを犯すことになる。
正確には
 サンプリング周波数 100SPS
 周波数帯域特性   50Hz
と書くべきであった。そうすればせめてナイキスト周波数で帯域制限することを考慮できたであろう。 繰り返して言う。業界固有の単位系などに惑わされてはいけない。われわれはMKS、CGSなどきっちりとした単位系および呼称法を固守すべきである。
 なぜならば会話は無前提に我々の業界内の言葉として受け取られるものなのだよ。Hzと言えば周波数であり、【信号をスペクトル分析したときに分解されるスペクトル】のことであって、単純に【単位時間における繰り返し数】ではないのだよ。

 電子技術の社会やデジタル信号処理技術でサンプル周波数のことをHzと単位するのは間抜けか馬鹿だけだ。気象や土木関係でそんな記述をする間抜けが多いことはわかっているが、アジレントやテクトロなど信号そのものを扱うプロの世界や解説書でこういう混用はあってはいけない表記なのだよ。

以上。

参考

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