Ham Journal No.64 1989年11・12月号
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JA1QPY 玉置晴朗 |
2003/11/28 コメント WEB掲載の時点(2000/12/31)では見解の違う部分も多いので、アンテナ測定と標準DPは http://www.madlabo.com/mad/ysim/index.htm の「八木アンテナを作ろう」 を参照してください
アンテナを作ったり壊したり,新しいアイデアを試してみることはアマチュアにとって非常に興味あふれることでしょう.記事を参考にしてそのままコピーする場合でも,自分の汗水を流したアンテナがどの程度のものか気になるものです.かなり前ですが,ラジオゾンデの発振ユニットが秋葉原に出回ったことがあります.正確な周波数はわからないのですけれども,その構成が鉛筆ぐらいの太さの真空管と直径3mmで8cm程度の長さの銀色の並行線で作られた共振器でできていました.
かなり高い周波数で発振するような感じを持って手に入れて実験したことがある方も多いでしょう.144MHzに出るのは限られた人であった時代のことです.周波数はレツヘル線でおおよその見当をつけてみたところ杓400MHzで使うことができたような気がします.この発振器を使って八木アンテナの実験や最適な配置を捜してみたりしたのも遠い思い出になってしまいました.
アンテナに対する思い入れは,少年期に見たそもそもの動機となったOMのアンテナヘの憧憬から始まり,初期の頃に作っては壊した多くのクズに象徴されています.アンテナを夢想し製作して性能を突き詰めていく過程は非常におもしろいものです.435MHzでの70cmという波長は長すぎず1200MHzのように短かすぎず,いろいろの面でちょうどいいサイズです.
アマチュア科学者であればそれを実験しデータを取って参考にすることを望むのが自然のなりゆきです.交信だけが無線の楽しみではなく,電波を使っていろいろな実験が可能なのもアマチュア無線のおもしろさではないでしょうか.
実験や測定にはかなりの投資を必要としますが,メーカー製の測定器がこの世の始めからあったわけではないと思い,自前で基礎的なところから始めました.金銭的な投資ではなく時間と暇の投資ですが.そのためにまずは標準ダイポールの作成というわけです. 周波数は435MHz帯,他の測定器はディジタル・テスター,送信機を除いてすべて自作です.
すべての記録は私のRBBSの中にあり,昨年からボチボチと実験してきたものです.実験の追試はしていません.おかしいものはおかしいなりに書いてみたJPlXDEと私のダイポールのお話です.

最初にやみくもに作ってみたのが第1図です.もともと73Ωのダイポール・アンテナを50Ωにするためにはいろいろな方法がありますが,ここでは整合器のややこしさと周波数依存性をきらって,できるだけDPそのものでインピーダンスを下げるように努力しています.つまりエレメントを太くするとリアクタンス分が0になるときのインピーダンスが下がるという現象を利用するわけです.
たくさんの本を参照してみましたが,どうも納得いかないので数値積分で実行してみました(リスト1,リスト2).その結果では(波長=1)として規格化した寸法で0.04あたりで50Ω程度になります.
しかし、0.04×70cm=2.8cm,直径で5.6cmではいささか手持ちがないので実のところは10mmの鋼パイプにしました. この場合,波長の1/140=0.007になるので最適な場所でも,第1表のとおり1.3ぐらいのSWRになることと思いましたが…….
実際の製作は,ガス配管用の嗣パイプをできるだけまっすぐ伸ばし,両側のエレメントの間の絶縁物として水性ボールペンの軸を使いスーパーセメダインで接着してあります.BNC接栓は2mmの黄銅線でごく短く接続しています.このBNCへの配線部とエレメント間のすきまがどういう具合に影響するかは不明です.そこでできうる限り短くなるように努力だけはしました.
保持の方法は第2図のとおりです.写真用の三脚から横に塩ビ・パイプ(VP16)を横向きに保持します.先端には10×10mmの割りが入れてあってそこにDPを差し込み,ケーブルはパイプの中を通って出てくる仕組みです.

これのSWR特性はどういう理由からかは不明ですが第2表のように2種類残っています.計測システム(第3表)の方法で測定したものですが,これがtypeO,ケーブルを長くして(10mの5D−2V)測ったものがtype4です.数値計算のはうからみると,tyPe4のほうがもっともらしいんですけれど.
第1作を会社で見せびらかしたのに触発されてか,同僚のJPlXDEが作ってきました(第3図(a)).「俺の方がよくできているだろう!」,という感じでしょうか.
普通形式のDPだと直角にケーブルを引き出さなければならないので,それをきらってこのタイプにしたようです.この2つの性能がどれくらいのものに行き着くのかは話の必然.最初に私が検査してみました. SWRに関しては,XDEのものがどうしても下がらないということは聞いていたのですが,単純に調整がヘタクソなんだろうと思い込んでいました.ところが電界強度を測定してみると,おどろきもものき.XDEのスリーブ・アンテナは私のものに比較して-9.64dB!
そんなアホな,というわけであれこれ相談した結果,スリーブの下のはじを固定しているエポキシ樹脂があやしいということで,その部分が開放状態になっているものに作りなおすことになりました.

これもJPlXDEの改良型力作です(第3図(b)).その結果が第2表のtype2です.434.0MHzで見事にSWRも下がりました.GP(第3図(c))のほうも436.0MHzで見事なものです..総合的に見てGPアンテナが広帯域なのも見て取れます.きっと見かけの太さが大きくなるのかなと思っています.
どんなにがんばってもSWRが下がらなかった原因は,スリーブの高電圧になる部分をエポキシ樹脂で支持したことだったようです.誘電拐失をもろに見せつけられた感があります.
教訓としてアンテナの高電圧部分には誘電損失が問題になるようなものを使うべきではないということです.HFのダイポールなどでも,その両端部分の絶縁物や周辺環境にはかなり気を使うべきなのかもしれません.
アンテナのSWRは市販のものや自作品でもそんなに問題はなく測定できるのですが,実力=ゲインを相対的にでも知りたいと思ったときにはかなりの困難を伴います.
議論になったときに納得させられるだけの再現性がありませんと水掛け論になってしまいます.


筆者の測定環境はおおよそ第3表のとおりです.送信機から送信アンテナ,受信アンテナ(測定アンテナ)まではいいとしても,その出力を再現性よく測らなければなりません.
アンテナは標準タイポールとハンディの5エレ八木です.検波器は50Ω終端の1SS16で構成され,入力インピーダンス100MΩのディジタル・テスターで構成しました(第4表).試験アンテナは受信側で測定しています.
これらのアンテナ同士を十分離し,かつ十分近く!配置して計測システムを構成します.逆のことを書いているようですが,これには理由があります.十分離してというのは当然ですが,十分近くでというのは,地面反射,そのはかの反射の影響を少なくすることに理由があります.検波器の直線性のいいところで測るということでもあります.
検波器の終端抵抗として使うものは普通の小さいものでかまいませんが,この周波数(430MHz)に限って使うというのなら小出カのハンディ機でSWRを測ってみてください.短時間なら1/8W型に1Wをぶちこんでも燃えはしません(数秒ですが). 気になるのは検波素子の直線性です.自作のATTなので確実なことはいえないのですが,補正用の第2表を作ってみした.ディジタル・テスターで1VをOdBと見た場合の補正値です(第4図,第5図).デシベルの詳細は第5表にあります.
補正表は実際に測定されたdBVにこの値を加算すれば実際の値になります.たとえば実際には0.1Vが測定されれば(一20dBV)で,そこの補正値は約2dBVですから実際の値は(−18dBV)程度になるということです.
この結果からアンテナを測定したときに(−16dBV≒150mV)以上の出力が得られるのなら,相互比較したときにも何の補正もいらないことがわかります.アンテナのパターンを測るときはそれ以下の部分にはこの補正値を加えることで,(−30dBV≒31mv)ぐらいまではなんとか使えそうです.
私の部屋は床が15mmの合板でできています.その下に暗室兼用の地下室が作られています.そんなわけで床下は2m以上、壁面からも約2m天井からも2m離れて設置されていることになります.直接波は2mの距離ですから,室内で測定する環境としてはまずまずというところでしょう.
5エレの送信アンテナから測定するアンテナの距離は2mなのですが,これは第7表に基づき算出しています.アンテナを交換する場合は1cm以内程度に同じ場所に設置するようにします.いずれにしても各人の状況が異なることを加味して,部屋や測定状況が問題を起こさないように設定しなければなりません.そうでないとせっかく測定したデータもその場限りのことになってしまい,あとでデータを利用しようとしても部屋の配置が変わっていたりすると再現できなくなったりします.
再現性と個々の不要物(反射など)にできる限り気を使ってデータを取ると,それで一生楽しめます.
屋外で計測しています.環境は第6表のとおりです.距離の遠いはうは受信アンテナを8エレの八木にして,送信アンテナを試験アンテナとしています.距離が近いほうは受信アンテナにダイポール,送信アンテナに試験アンテナを使います.私の場合と異なるのは送信アンテナとして試験していることと,送信電力を一定にしようと努力している点です.この努力にどれほどの意味があるかは不明です.
測定中に気がついたのですが,送受信どちらのアンテナも数cm動かすとかなり出力に変動が見られます.地面反射の影響だと思うのですが,アンテナ相互の比較という面で考えるとかなり問題がありました.結局アンテナを交換するときは1cm以内程度の同じ場所に必ず設置しなくてはなりませんでした.自由空間に近い場所としては,やはりアンテナ間の絶対距離に比べて反射してきた経路の距離を大きく取るように努力すべきでしょう.ビルの屋上から隣のビルの屋上とか,間に谷があるような場所がいいと本にはありましたがやはりそのようです.
一般に屋外で計測するといいような感がありますが,
必ずしもそうではないということです.
第2表を見てください.総合的に見てtypelのアンテナ以外は±0.3dB程度に収まっています.この偏差が実際の八木アンテナなどの絶対測定の場合に有意差としてあるというわけでもないので,こんなもんかいなというところにおちつきました.
標準ダイポールの再現性については注意深く作ればそこそこの結果が得られるということになります.
いつも標準になるものがあれば,HF帯のミニチュア・アンテナを作って実測することができます.アマチュア無線の永遠の課題であり,お友達であるアンテナヘの深い理解と,やみくもに真似して作ってみるだけから,時を越えてデータを残せるようになることも重要かと思います.
この記事を書くまでに手が付いていないものとして,この標準アンテナからの出力電圧から絶対ゲインの算出や,もっと正確な形での数値演算の方法などがあります.
1本のDPから2本のDPの相互作用をこなせるようになると2本のダイポール,つまり多素子の八木アンテナに道が開けるのでしょう.そして立体空間に配置した仮想的なアンテナのシミュレーションまで夢はとどまりません.ここから八木アンテナの総合的な数値シミュレーションに到るまでの道のりはおもしろいものになるでしょう.
電流分布を正荻波と仮定した起電力法による計算式によっています.式そのものは簡単なのですが中に出てくる特殊関数にはてこずりました.正弦積分,余弦積分,それらの特殊関数を求めなければならないので数値積分を実行してその関数値を求めるものが必要です.プログラムはp.10からにリスト1,リスト2として示しています.
数値積分は汎用に作られています.積分すべき関数を関数へのポインタとして持って行きます.いろいろの場面で使えますのでよく眺めてみてください.
各々の部分は単体で(debug)スイッチにより試験することができます.
コンパイルは MSC4.0ないしは5.1で可能です∴
5.1の場合は
CL dp.c dintegral.c/F4000
とします./F4000 は数値積分の本体が再帰的に実行されるためスタックがかなり探くなるので,適当に大きく設定する必要があります.
実行はエレメントの半径を波長=1単位として規格化した値で入力すれば短縮率に応じて抵抗,リアクタンス,50(1に対してのS[が得られます.第1表を参照してください
・森口,宇田川,一松「数学公式集V特殊関数」岩波全書
・T.R.マッカーラ「計算機のための数値計算法槻論」サイエンス社
・松本欣二「電波工学入門」朝倉書店
・竹本,荒「Cによる数値計算」朝倉書店
・G6JP G.R.Jessop「VHF/UHFMANUAL」CQ出版社
・岡本次雄「アマチュアのアンテナ設計」CQ出版社
・安達三郎「電磁波工学」コロナ社
・安達三郎,石曾根孝之「電磁波工学演習」コロナ社
・友近晋「ベクトル解析」共立出版
・山内,宇野,一松「電子計算機のための数値計算法」培風棺
・日経エレクトロニクス1988/11/28 No.461p.217 日本経済新聞
使用したソフト
DERIVE 式の運用
SC3 簡単な数値計算
MSC(5.1) 数値計算
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