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BirdGPS
長距離移動通信実験
研究・設計 数理設計研究所 矢澤正人
yazawa@mail.wind.ne.jp
2009/9/9 記述
2009/9/10更新

 鳥類の行動監視を目的に開発中のBirdGPSを用い、赤城山地蔵岳山頂(1673m)に受信局を仮設、BirdGPSを装着した自動車で一般道→関越道を走行しながら、広域運用実験をおこなった。
 実験の結果、最遠通信距離は46km、明らかに通信が困難であると予想された範囲を除き、およそ50%の通信成功率となった。
 赤城山山頂に受信局を常設することにより、赤城山南方の北関東広域における鳥類の行動監視が現実的なものであることを立証した。

電波伝搬シミュレーションと測位結果

青線 車載受信機による測位座標のプロット
赤線 山頂にて受信した測位座標のプロット
上図に、電波伝搬シミュレーションの計算結果を重ねて表示。
赤〜黄の範囲では強力に受信でき、青〜赤に行くにしたがって受信は難しくなる。


実験装置

送信機
  • BirdGPS TCXO送信機型 1号機(JP1COK) 
    ポカリスエット500mlペットボトルを介し、車両屋根上にガムテープで固定
    バッテリ アルカリ単三電池3本
  • 送信周波数 144.44870MHz
  • アンプ出力 -4dBm(同軸ケーブル直結でスペアナにて測定)
  • 等価実効出力 -11dBm(1m距離のダイポールアンテナにて受信したときに-20dBm。送信アンテナにもダイポールを用いると-9dBmだった。)
  • 動作設定
    GPS測位間隔 0分(GPSをコールドスタートし測位成功時にデータ送信開始、送信終了時に再度コールドスタート)
    2次元測位成功から3次元測位成功までの待ち時間 60秒
山頂受信局(JP1COK)
  • 受信機 FT-857
  • アンテナ 2.15dBi L=0.95m モービルアンテナ(ダイアモンド AZ510)
  • アンテナは、赤城レピータの函の天井面に仮設置
車載受信局(JQ1YUR)
  • 受信機 FT-857
  • アンテナ 2.15dBi L=0.95m モービルアンテナ(ダイアモンド AZ510)
  • 車両の屋根にマグネット基台で固定

写真

車載のBirdGPS。
鳥のサイズと成分に近いポカリスエットのペットボトルを介して車両にガムテープで固定。
BirdGPSを装着した車両の位置は、リアルタイムで地図上に表示される。
写真中央が実験に使用したBirdGPS、42×21×10mmと超小型。
写真奥の、08年の鳥学会で示したモックアップよりも、さらに小型化している。
電池は内蔵とせずに外付けの電池ボックスを使用しているが、250mAhの電池を内蔵とする場合でも、高さが4mmほど大きくなるだけ。
受信アンテナを設置した赤城レピータ(写真手前のマスト及びステン箱)。
アンテナは箱の向かって左端上部(地上高3m)に設置。
箱がステンレス製のためマグネットが付かないので、乗せてあるだけ。

実験概況

16:15 赤城山地蔵岳駐車場で送信機の運用を開始し、に受信局一式を背負いJP1COKが登山を開始。
17:25:04 山頂に到着し受信局設営、受信周波数を調整しデータの受信に成功。送信機車両の移動開始。
17:40 高エネルギー資料館付近で送信機車両を停車し、受信周波数の再確認
18:08 赤城道路旧料金所付近まで、断続的に受信成功
しかし、その後はロケーション不良のため通信は成功せず、キャリアも聞こえなかった
18:56 渋川伊香保IC付近に停車。
18:08以降車載機での受信が成功していないことが判明。受信周波数を再調整し、車載機での受信が回復した。山頂では受信できず。
19:03 駒寄PAに停車するが、受信できず。
赤城山から西〜南西の方角は伝播状態が悪いと覚悟していたが、心配になってきた。
19:11 前橋市中心部から西北西4kmほどの群馬町北原付近で、ようやく受信成功。
19:12〜19:17 順当ならば1分数十秒間隔でキャリア受信+SS復調するが、データが途中で途切れてしまい、受信は完全には成功しなかった。この間も、耳で聞く限りはキャリアとSS変調音はきれいに聞こえていた。Sメータは常時S1。その後、上里SAまでは、ほぼ受信成功。
19:28〜19:36 上里SA停車。ここでは非常にきれいに変調音は聞こえ、受信も成功。
19:40〜19:49 9分間の通信途絶。先ほどまでと違い、キャリアはかすかに聞こえる程度。
19:54 花園IC付近通過時に、今回実験の最長通信距離を記録。以降通信は成功しなかった。
20:23 高坂SA停車。通信できず。
20:57 三芳PA停車。ここでも通信できず、シミュレーションの結果からこれより遠方での通信成功は困難と判断し、ここで実験終了。

実験データと概要

 ファイルはGPGGAのみを含むNMEA形式のテキストファイル。
 カシミールで読み込む際は拡張子をnmeに変更し、[ツール]→[NMEAを読み込み]。
 時刻08:5959、高度999999mのデータは、システム再起動時の試験信号。座標は高崎ジャンクションを示す固定データ。

 城山頂で最初にデータ取得に成功した時刻 17:25
 赤城山頂で最終にデータ取得に成功した時刻 19:54

 車載受信機で安定なデータ取得を開始した時刻 18:56:53
 車載受信機
 車両搭載の受信機で受信成功した測位データ数 106件
 赤城山頂で受信成功したデータ数 31件
 赤城山頂で最後に受信成功した時刻までに、車両搭載の受信機で受信成功したデータ数 59件

データ通信の成功率 1

 車載受信機の受信周波数を修正した時刻(18:56:53)から、山頂受信局で最後にデータ受信に成功(19:54:00)するまでの約2時間について、データ通信の成功率を評価した。

 送信データ数 48件
 受信データ数 21件
 通信成功率 43.8%

 失敗した伝送のうちの11件は、シミュレーションでは電波伝搬状態が良くないと考えられる赤城山南西の地域を通過中のものだったため、さらに南下してからのデータのみを評価してみることにした。

データ受信の成功率 2

 安定な通信経路であったと思われる地点(19:11:04)から山頂受信局で最後にデータ受信に成功(19:54:00)するまでの期間について、データ通信の成功率を評価した。
 なお、この間にデータ受信に成功していないものについても、FLAG以下6〜10バイト程度の受信までは成功していたデータが10件程度あった。

 送信データ数 37件
 受信データ数 21件
 通信成功率 56.8%

 データが途中で途切れた原因は、車両が60〜80km/hで移動していたことによる電波伝搬経路の変動ではないかと考えられる。通常のダイバシティ受信、あるいはMAD-SS向けに特化した何がしかの多重受信法により、対移動体通信の通信成功率向上が可能だろう。

GPS測位時間

 18:56:53から20:57:21までの95データについて、GPS測位時間の評価をおこなった。
 走行中の車両から平均1分02秒でコールドスタートに成功しており、95件中92件で3次元測位に成功している。
 現在入手可能なGPSの性能としては申し分ない。

 データ件数 95件
 平均データ送信間隔 1分17秒
 オーバーヘッド (キャリア1秒) + (送信データ 17バイト×0.7=12秒) + (GPS受信待ち時間 2秒)  = 15秒
 平均GPS測位時間 平均データ送信間隔1分17秒 - オーバーヘッド15秒 = 1分02秒

 データ件数95件のうち、3次元測位に成功しなかったのは3件。
 19:01:22と19:11:04については、前の測位からの経過時間がそれぞれ54秒、1分11秒となっており、平均GPS測位時間と大差は無い。2次元測位は1分程度で成功したが、その後タイムアウトの60秒を経過するまでに、4つ目の衛星を捉えることが出来なかったことを表している。
 この時間帯は西に榛名山、北東に赤城山がある地域を通過中であり、衛星配置の加減と相まって3次元測位に至れなかったのだろう。
測位時刻 前の測位からの経過時間 緯度 経度 使用衛星数
19:00:29 0:01:07 3627.345 13900.813 4
19:01:22 0:00:53 3626.75 13900.872 3
19:03:07 0:01:45 3625.902 13900.91 4
19:04:00 0:00:53 3625.907 13900.913 4
19:04:55 0:00:55 3625.902 13900.913 4
19:05:58 0:01:03 3625.912 13900.914 4
19:07:23 0:01:25 3625.913 13900.911 4
19:08:52 0:01:29 3625.583 13900.971 4
19:09:53 0:01:01 3624.986 13901.235 4
19:11:04 0:01:11 3624.264 13901.412 3
19:12:59 0:01:55 3623.124 13901.564 3
19:14:54 0:01:55 3622.044 13901.835 4


受信状況

 赤城山山頂は北関東では有数の好ロケーションであり、電波伝搬範囲はすこぶる広い。
 FMやその他の混信が心配されたが、SSBのものと思われる弱い抑圧や原因不明のビート音などが聞こえはしたが、実験中を通じて明確な混信は無かった。

簡易シミュレーション

  • 送信アンテナ高度 1673m
  • 受信アンテナ高度 2m
  • 送信出力 0.01mW
 およそ70kmが到達限界距離となる。
 ただしこのシミュレーションは簡易なものであり、走行中の自動車からの送信ではこれほどの通信距離は実現できないだろうと予想していた。