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リチウムポリマー電池の評価
研究・設計 数理設計研究所 矢澤正人
yazawa@mail.wind.ne.jp
2009/6/26 更新

 リチウムイオンポリマー電池は軽量で重量あたりの容量が大きく、iPodなどの小型モバイル機器に使われる例が増えてきました。
 小型・軽量・大容量の特徴は自然環境保護無線協会で企画している野生生物用GPSトランスポンダにもうってつけです。 ここではリチウムポリマー電池の性能評価の一環として、定抵抗による放電特性と、実際の利用状況を想定した持続時間の試算をおこなってみました。

想定するターゲット機器

 野生生物用GPSトランスポンダは、GPSモジュール、無線機、制御用CPUを一体にし、野生生物に装着して行動範囲を知るためのものです。規定した時間に、または外部からの無線操作に、GPS測位をおこなって測位結果を無線送信するものです。 試作したGPSトランスポンダの各要素の消費電力は以下の通りです。
  • CPU 待機時 0.02mA 3V(C8051F411、32kHz)
  • CPU 動作時 2mA 3V(C8051F411、8.82MHz)
  • GPS 動作時 50mA 3.15〜5V(ORG-1315)
  • 無線機 動作時 44mA 3V(MAD-SS150、145MHzTX)
 GPS測位をしてから結果を送信するため、GPSと無線機は同時に動作することはありません。
 無線送信はノイズでGPSの測位性能が悪化しますし、GPSモジュールの動作雑音は送信電波に悪影響を与える(PLLの周波数変動)という理由もあります。

試作したGPSトランスポンダ。
電池は2枚の基板に挟まれている。

実験仕様の検討

 システム最大電流は、GPSとCPUが動作している52mA、終止電圧は、無線機に使用している電源レギュレータの電圧降下が45mA時に350mV@25℃になるため、3.35Vになります。
 リチウムポリマー電池の公称電圧は3.7Vなので、52mAを流そうとすると負荷抵抗は3.7V/52mA=71Ωになります。
 E6系列で近い値ということで、ここでは68Ωの抵抗を負荷抵抗に選びました。3.7V/68Ω=54.4mAです。

 電池には、回路規模に見合う適当なサイズと容量ということで、powerstream.の502030を選びました。250mAh(typ)です。 型番はそのまま形状サイズを現しており、高さ5.0mm、幅20mm、奥行き30mmです。
 powerstreamは日本からでも簡単に通販できて嬉しいのですが、買えないサイズが多いのが残念です。
 メーカーサイトの502030のデータシートが破損しているため、代わりにGMB552030のデータシートを転載しておきます。形状と容量以外は内容は同じだと思います。

実験結果

  • 電池 powersream 502030 270mAh(typ)
  • 負荷抵抗 68Ω(3.7V/68Ω=54.4mA)
  • 終止電圧 3.35V
  • 測定器 デジタルテスタ Fluke76 測定時(30分間隔)のみ接続

時間(分) 電圧(V) 積算電力量(mAh) 電流(mA・0.5h) 電流(mA)
0 4.12 30.29411765 30.29411765 60.58823529
30 3.99 59.63235294 29.33823529 58.67647059
60 3.89 88.23529412 28.60294118 57.20588235
90 3.8 116.1764706 27.94117647 55.88235294
120 3.741 143.6838235 27.50735294 55.01470588
150 3.71 170.9632353 27.27941176 54.55882353
180 3.669 197.9411765 26.97794118 53.95588235
210 3.593 224.3602941 26.41911765 52.83823529
240 3.494 250.0514706 25.69117647 51.38235294
270 3.151 273.2205882 23.16911765 46.33823529
合計 273.2205882  

リード線の片側は抵抗に半田付け。
久しぶりにリード付きの抵抗を使った。

実験前のフル充電
多機能充電器SwallowAdbanceを13.8Vで駆動
 終止電圧の3.35Vに達したのは実験開始から250分ごろ、そのときの積算電流量は260mAhになります。ちょうどカタログスペック通り+アルファの容量でした。

持続時間の試算

 機器の条件は、以下の通りとします。
 GPS測位の間隔が数時間以上と長くエフェメリスやアルマナックの取得が意味を成さないため一切諦め、毎回コールドスタートしているため、GPSの測位時間が45秒と長くなっています。
  • GPS 測位時間 60秒
  • 送信時間 12秒
1日の測位回数 測定間隔 平均電流(uA) 動作日数(日)
1 1日 46.95 222
2 12時間 87.79 119
3 8時間 128.64 81
4 6時間 169.49 61
6 4時間 251.18 41
12 2時間 496.27 21
24 1時間 986.43 11
48 30分 1966.77 5
96 15分 3927.43 3
  リチウムポリマー電池は自己放電が非常に少ないと言われていますし、たいていの電池は微小電流では公称容量よりも持続時間が延びる傾向があるので、長期の動作では試算結果よりも持続時間がすこし伸びるのではないかと予想します。
 欲を言えばもうすこし持続時間が長ければと思いますが、いまのところはこれで我慢。
 将来的には、さらに小型の電池を太陽電池で補充電しながら運用できればと考えています。

過放電

 過放電はともかく、過充電・ショート・破損は、発煙・発火の恐れがあり、youtubeにも関連動画が多数掲載されています。密封構造ではないので爆発の危険は高くはありません。
 過放電にも注意が必要で、3.2V以下で過放電になり性能が悪化し、2.75Vを下回ると永久破壊します。今回の実験でも実験開始後300分の測定値は電圧0V、永久破壊させてしまいました。


外装の破損

 外装のラミネート絶縁を測ろうと、テスタのプローブでラミネートの表面を軽くこすっていたところ、ラミネートが簡単に破けてしまい、プローブの先端が・・・スパークしました。