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微弱電波によるSS通信の実証試験

  株式会社 数理設計研究所 玉置
2006/11/29 - 2007/04/30
Index
 実験機を試作して簡素な実験をした。送信アンテナは50MHz帯のダイポールアンテナは3m、大きすぎるので実用にはフェライトコアを使った8cmぐらいのものを送信用に使う。これはGID-FLに内臓できるサイズである。実験機ではダイポール等価電力にして2.5nWとなる。  野外では、送受ともに2mのアンテナ高さとして実験し、この超微弱な送信機で180mまでなら安定に通信ができた。200mになると急激に到達率が落ちる。検討の結果、高所にある微弱無線局で山から里への警報や環境情報の伝送に使うことができると思われる。

送信機

PB270019.JPG 試作送信機の周波数は50MHz付近。スペクトラム拡散コードを生成するのは1チップCPU(8051)。送信情報を2種用意し、付属の2つの押しボタンで選んだ方を送る。情報は同期用のFLAG(*8)を除いてバイト情報(*9)を6バイトを伝送する。この部分は、GID事業部製作である。

PB270020.JPG アンテナはフェライトコアに同調回路をつけたもので、SGから1mWを投入するとちょうど微弱無線局の規定である3m離れて500uV/mの電界強度になることを検定済みだ。もし効率100%のダイポールアンテナならば50nWを入力すれば同じ電界強度になるはずなので、アンテナ効率は5%でだ。
S05.png BPSK変調器にはPINダイオードを使い、CPUからの相補信号でon/off制御している。

PB200712.JPG 全体(送信用アンテナ、CPU部、電池)をプラスチックの板に載せて、持ち運べるようにしてある。

PB270021.JPG 高安定度の水晶発信機が左下の金属パッケージ、変調器は緑色の線が2本入っている場所にある。変調はSBMではなくPINダイオードによるSW型。高周波SWダイオードによるものと大差無い性能になるはずだったが試作後の測定では損失が多いものであった。おそらくアンテナ部のミスマッチだろう。あげく、ダイポールアンテナに2.5nWの送信電力と換算できる、超微弱無線局となってしまった。


実験機の最終仕様

通信形式は スペクトラム拡散の送信。受信にはバースト電波から即時に同期を取るための特許PDFを適用。

* 項目 単位 測定器など
1 周波数 49.959670 MHz SR625 ルビジウムタイムベース
2 放射電力 2.5 nW 群馬産業技術センター 太田支所 電波暗室 測定料金 9100円
3 変調形式 BPSK Phase 直接拡散 ノッチ間の帯域幅 2757Hz (SSB帯域幅)
4 TIP時間 0.725623582 msec 拡散するための最低1単位時間。受信機は44100SPSでADする。
1TIPあたり32サンプルすると 32*1/44100 → 0.725623582 msec
5 TIP周波数 1378.125 Hz 拡散するための最低1単位時間の逆数 44100/32 → 1378.125 Hz
6 拡散コード長 1024 TIP 10bit M系列は1023TIPで構成されるので最後に0を追加して1024TIPにする
7 拡散周期 0.743038548 sec 32*1/44100*1024 → 0.743038548 sec
8 FLAG 初期同期のために連続して2拡散周期分を送出して、受信側ではこの間に同期する
9 DATA データを表す部分
10 微弱無線局 3m地点で測定して 500μV/m以下であること → 総務省のページ
11 実験ノート ExeNote20061120.pdf  FT857のSNR、オーディオ入力などの実験パラメータ

室内実験

2006/11/20 試作品ができ、ともあれ動くことがわかったので太田研究室に隣接する群馬県立東毛産業技術センターにある電波暗室の使用を申し込んだ。
MOV02164.MPG ←動画
送信用のバーアンテナを3m法の電波暗室で測定している。右側に上下に動いているのが校正済みの測定用受信アンテナ。
DSC02169.JPG  バーアンテナによる送信アンテナの実験は発砲スチレンの上に立てて2TコイルでSGにより1mW=0dBmを与えて実験。

【アンテナのみの実験】

 ところが1月にならなければ空いてないという。担当者に数分間で終わるのだよ、などとごねてみたら朝早く他の測定作業が始まる前に割り込ませてくれた。
 数日後の早朝、まさに数分間で41dBu/m@3mの値が得られた。微弱電波は3m離れて500uV/mだから54dBu/m@3mである。それに比べれば13dBも小さい。ダイポールアンテナに50nWを与えると3m離れて500uV/mになるので、ダイポールアンテナに2.5nWを供給したのと同じ電力である。電界強度とすれば112uV/m@3mとなる。【この実験の写真は無い】
PB200713.JPG 太田研究室内の私の机の上で通信実験をしてみた。受信機のSメータは常に8ぐらいであり、ノイズ環境は良くない。
 15坪の室内から廊下に出て5m、全体的には10mぐらいが到達距離であろうか。ちょっとガッカリだけれど、まあ雑音が多いからしかたないかと慰めた。
受信機 FT857 オシロの上に乗っている
モード USB バンド幅2.5kHzぐらい
雑音 30uV S8、SGで比較→30dBuぐらい
  • 受信機はFT857をUSBモードで利用
  • アンテナは車載用の垂直ホイップを机の横
  • デコーダは東芝のToughBook(CF-29)パソコン。マイク入力を利用して受信機のスピーカ出力を-20dBのATT経由で取り込み処理
  • 受信解読はボーランドCビルダVer5で作成した
  • 手持ちの電子測定器

野外実験

2006/11/25

PB250016.JPG

太田研究室の室内や室外近傍では周囲雑音が大きい(受信機入力にして30dBu=S8)ため、低雑音環境を捜索して東側500mにある水田地帯で実験した。いちおうSメータが1未満の場所としたから0dBu程度だと思われる。
 その結果、ダイポールアンテナ入力にして2.5nWの送信電力で180mまでなら安定に通信でき200mになると急激に到達率が落ちることがわかった。

PB250002.JPG

PB250009.JPG

PB250007.JPG 距離測定は1kmぐらいまで5cm精度で測れるレーザレーダFG21で自動車までの距離を測った。この写真位置で183m、100%解読地点。

PB250012.JPG ひとりで実験を始めたら遠距離になりすぎ、受信できているのかわからなくなった。成功すれば受信ソフトの下部に大きく緑色を表示させて双眼鏡で確認できるようにした。上に受信波形、赤いのは解読後のスペクトル、下の黒いのは実は緑色=解読成功
PB250018.JPG 猿が踊っているようだが、送信機はこのように頭上に持って実験した。送信機の地上高は1.8mというところだろう。
 自動車の屋根の高さは1.6m、垂直ホイップの基底部が放射中心とすると、約2mの高さになる。

PB250010.JPG  受信機はUSBモードなので中心周波数は少し低め(-1.7kHz)の
49.95830MHz


成果:
  • 送受信アンテナの地上高 1.5〜2m
  • 放射電力 2.5nW
  • 3m法による電界強度 112uV/m
  • 到達距離 183m (確実な到達距離)
  • 限界距離 200m (50%エラー、感覚的評価)
 おもしろいことに、ある限界距離からばったりと届かなくなる。この通信法の特有な現象かどうかは不明。デジタル通信なのでこうなるのか? わからない。
 ちなみに「成果」のパラメータで数値計算してみると受信機の入力は-22〜-28dBu→0.08〜0.04uVになる。受信機データシートによると50MHzのSSBの感度は0.125uV(SNR=10dB)なので、ほぼ極限の性能なのかもしれない。SNRについては別途実験の必要がある。今回の実験は、そこまで届いたと言うだけのことだ。

全体的な評価


 現状の2.5nW送信機および微弱無線局50nWの送信機でででどれぐらいの距離がカバーできるか計算してみた。グラフの青色線の実験機から180m地点での受信電力が-22dBuであることがわかり、赤色が微弱無線局の規定であるから-22dBuをたどれば(送受信ともに地上高2mであれば)350mが通信範囲となる。学校の校庭なら端から端まで、データ通信が可能だ。

 本来の目的である、道路などのインフラからどこまでの距離をカバーできるか。受信は低いタワーか電柱の上として15m高、送信は山の上で50mが赤色100mが青色。計算は微弱無線局の送信機を仮定し受信機にダイポールアンテナを使うものとして計算した。
  • 100m → 7km
  • 50m → 5km
がカバー範囲となる。成功!

実験フィールド募集

 これの全体は、防災および自然観測のための通信システムです。特徴は
  • 無線免許を要しない 微弱無線局
  • 15分に1度の通信なら電池だけで2年ほど動く
  • 電力や外部への電線が無いので非常に雷に強い
  • 電池内臓で完全密閉できる
  • 可能なセンサは気温、水温、水深、ワイヤセンサ
    GID事業部を見てください。
  • 必要ならRS232Cの受け入れも可能です。
 これの野外実用試験を数件、募集します。できればいくらか研究費用を出していただければ嬉しいのですが、必須ではありません。こちらの興味との兼ね合いで決まります。性能の保証はできません。できれば公開できる場所がいいのですが、必須ではありません。当方の目論見としては
  • 渓流の上流に置く土石流センサから里への警報
  • 地すべり警報機
  • 岬の先端にある水位センサからの津波警報
  • 川などで土手を越えて水位の通信
  • 火山ガスなどの影響が大きい場所での環境計測
とまあ、このようなものです。
 現在のシステムでは当方の機材費として
  • 送信機 およそ数万円、値段は未定、試作品
  • 受信機 およそ12万円ぐらい
  • データ処理用のPC8万円ぐらい
 ぐらいの経費をかける必要があります。負担が必要だとは言いませんが、興味深さによって選択せざるをえないのです。将来的には全部で5万円ほどにしたいと思っています。

申し込み方法
  • 提案者の所属や氏名、個人でもかまいません
  • やってみたいこと
  • 正確な現場説明
    川や山に設置するなら現場管理者の許可が必要
  • 連絡先 メイルでよい
これを mad@mail.wind.ne.jp にお送りください。特に申し込み期間はありません。

現状:群馬大学建設工学の建屋から近傍の川の水位測定が一案。(2007/04/20)

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