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2004/08 中国の三峡ダム
発端、測定器を中国へ持って行った記録
株式会社 数理設計研究所 玉置晴朗 2004/08/20

発端

 2004年4月、(その時には)金沢大学のワンさんの依頼で金沢市近傍にある地すべり地の3D測定をした。ワンさんは中国から来て地滑り研究をしている。その後、彼は京都大学防災研究所に戻った。
 その時にワンさんが、「中国では三峡ダムの貯水が始まり、上流部の水位が上昇して地すべりが問題になっている。研究と対策のために測定してくれないか?」と話した。私たちは物好きが歩いているようなものなので、「こりゃあタダで海外旅行だ」と、「いいよ」と返事したのだった。と言うわけで、今回のプロジェクトとなった。結局は武漢までの旅費はこちら持ち、その先は相手先負担となった。でも、日本とは成因が違う山や川を見られて本当に良かった。こういうものは本ではわからない。

準備

 持参していく測定器はLPM2Kと言うオーストリア製の700万円ほどするレーザレーダで重量20kg。これの制御ソフトは価格不詳。バッテリーや電源、制御用のPCとケーブルや工具などが別に200万円として、20kgほどだ。最初の難関はもちろん日本と中国の税関。 まずはこれの検討からはじめた。

輸出規制

 昔の日本には世界がふたつの反目しあう陣営に分かれていたときのCOCOMと言う貿易制限があった。現在は無くなり、その代わりに核拡散を抑制するための規制などがある。これは「輸出貿易管理令」と言い、
http://www.jetro.go.jp/se/j/jetro-file/bh-index.html には
「許可を要する貨物・対象国」として
武器・大量破壊兵器の関連部品や通常兵器の関連汎用品等は全地域への輸出が規制されている。
日本版キャッチ・オール規制:食料品等を除く、リスト規制以外の全貨物・技術が対象で、指定された25カ国(米、カナダ、 EU諸国等)以外の地域への輸出が規制されている

があげられている。我々の装置はレーザを使って遠距離を測定するので、核兵器関連のキャッチオール規制に述べられているものに近いので、念のために輸入元に 「輸出貿易管理令 別表第一 項目別対比表 (該非判定用)」の正式文書 higaitou.pdfを作ってもらった。
 正式と言う意味は、その会社の「代表者の署名 + 代表印」のある文書と言うことです。当然ですがキャッチ・オール規制には該当しませんと言うないようでなくちゃいけません。

INVOICE

 三洋電機の池谷さんは、今まで世界各地に測定器や電子装置を持っていったことがあるらしいので、仔細を伺うとINVOICEなるものが必要らしい。これが難問、輸出や輸入で片方向の書式ならWEBに山ほどあるが、持って行き、持って帰る書式はWEB上にはまったくみつからなかった。
 そこで、さらにIさんの知り合いである、電子測定器の輸出入業をやっていた方に問い合わせてもらい、次のようなものとした 2004invoice.pdf。これら5部を正本として作成する、多いような気もするが税関ではそのまま使って証明書を作るのでケチらないこと。内容は
  1. 持ち帰るために私から私へのINVOICE形式である
  2. INVOICEに書かれた残存価格の計算表
    1. 叶迫攝ン計の正式な印鑑、および他者証明があれば、より強力
  3. 行って帰ってくるぞ! って証明
    1. 往復航空券、パスポート、運転免許証 のコピー
  4. この装置の運用状態にある写真
注:
署名+印鑑したもののコピーではなく、5部コピーしてから署名+印鑑して全部を正式にする
INVOICEの会社欄には必ずロゴを印刷しておきましょう。ロゴが無い書類はハクがつきません。貿易文書は何百年も前から続いている慣習的な表現が多く、その意味は何か?と聞いても不明なことが多いのです。日本では、見積書、納品書、請求書が商取引の基本です。「INVOICE」は日本語では送り状と言います。
mad_print.jpg ケースや装置には中古運用品であることを示すために、ロゴをステンシルで作ってマークしておきます。飛行機からバゲージが出てくるときにも見つけやすくて便利。
航空便の番号までシールにして貼ってあると行方不明になりにくいそうです。

招請状

 公的な研究機関が関係していれば、相手から招請状をもらいます。要は、相手国の税関に対して、この装置は相手国で売り払うようなことは無く、ちゃんと目的を遂げた後は持って帰りますよ!と納得させるためのものです。(しかし、それでも相手国への入国時にはもめます)
 これはいろいろ書いてあるのでボカシテあります。相手研究機関から正式に招請状をもらってINVOICEに添付します。必要事項は
  1. 題名 「招請状」 以下、全部相手先の言語でかまわない
  2. 目的 何をするために装置を持っていくか
  3. 期間 いつからいつまで
  4. 氏名 目的を実行するために同行する者の所属と氏名
  5. 装置
    1. 所有会社 (どこそこが所有するXXの装置)
    2. 製造会社、製造国名
    3. 品名 3D - Laser Profile Measuring System LPM-2K
    4. 型番 LD90-3800HiP-LR(センサ部)、, PTM98(経緯台)
    5. Serical No.:9992182(センサ部)、9992183(経緯台)
  6. 相手先
    1. 正式機関名
    2. 代表者の署名 + 代表の印鑑
    3. 日時

実際場面

日本からの出国

 あらかじめ税関に電話しておけば、指示ももらえ、内部で通報が窓口まで行きます。そこで日本国から外へ出るときは税関窓口で「測定装置があるので税関検査を受けたい、電話してあります」などと、申し出ます。そうすると指示されますから、そこに行って上記一式の書類を見せれば、5部あるうちの1部全部を利用してその上に証明書を貼り付けたものを渡してくれます。これを帰国時に見せれば問題なく帰ってこれました。日本税関の証明書 japan_zeikan.pdf

中国への入国

 日本の税関でスムースに処理されても、相手国の税関は日本の税関とまったく関係ありません。安心しないように。我々は北京空港で入国したので北京空港から国内線に乗り換える直前に検査を受けます。そのときに申し出ると、英語で「中国人の受け入れ者がいれば呼んで来い」と言われました。
 あわてて、同行している中国人は中国人専用の(彼らにとっては帰国ですから)出口まで走っていって呼んできました。中国人は一般的に英語で議論できてもしないようです。
 税関所長の部屋の前まで全部の荷物を運んで、中国語ですったもんだする大声が聞こえます。内容はさっぱりわかりませんが、地質鉱山研究所であることと、保証金が高いと言っているのかも知れません。30分ぐらい中国語でやり取りしていましたので何を話していたのかはまったく不明。結局は保証金30%を地質鉱山研究所が払って測定器入国させることができました。一番最初に聞いていた100%保証金から値切り倒したのかしら?

中国からの出国

 地質鉱山研究所で渡された封印された正式書類(内容は不明)を税関に渡すとシリアル番号などインボイスに書かれたものと照合するだけですんなりとOK。保証金を返してくれましたが中国円なので、すぐに飛行機が飛び立つ場合にはそのまま日本まで持っていくしかありません。我々はたまたま台風で飛行機が遅延して乗り遅れてしまったので中国の銀行経由で地質鉱山研究所に返金できました。

日本への入国

 何も言われなかったので、行きに大騒ぎしたのがうそみたい。

自国人と外国人

 日本でも中国でも感じたことですが、税関職員は言葉が自由に通じるその国の人間には甘く見えます。おそらく実際は甘いのではなく、簡単な言葉のやり取りで怪しさを選別する能力があるだけでしょう。
 あらかじめ完全な書類を揃えて持ち帰るのならば、あえて外国人として通関するのではなく、その国の人に任せるのもトラブルを避ける一手段ではないかと思います。しかし、これは感じただけなので保証の限りではありません。

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