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研究ってどうするの?
ノートを作ろう

数理設計研究所 玉置晴朗 2003/09/28-2006/04/07

参考: 私が1975年ごろに試みた 「自動車用の雨滴感知器の開発実験のノート」 2003/09/27

 これはパソコンがなかった時代の研究ノート。あまり詳しくは書かれていませんが、それでも電子技術者、物理や工学を学んだ方なら大筋は読み取れるはずです。
 一番最初のページに「目標」がしっかり書いてあり、自動ワイパー開発の研究です。基本的なアイデアから始まり、わからないことが出てくるたびに調査と実験をして順番に解決していきました。ここではその開発経過そのものを見せたいわけではありません、はい。
 「ノートを書きつつ理解を進める作業」がこれから話しをする研究作業の本質です。もし、あなたがものすごく記憶力がよくても、ノートに書く作業をしていなければまともな研究はできません。

 なんだ、小学校の夏休みでやった宿題みたいなものだなと思いますか? ま、そうです。小学校のこの宿題はおそらく研究作業の初歩中の初歩なのでしょう。なぜ、初歩なのか? そこが重要です。

 これは人の脳の構造、または生物としての認識のありかたが関わっているのです。研究ってのはわからないことを調査し、先人の知恵を取り込みつつ新しい理解を自分の中に組み立てることです。その理解が人類で最初なら、それは非常に重要な研究ですが、個人的に最初なら個人的に重要なことですから臆することはありません。

 確実に言えることは凡人は研究メモやノートを書かないことなのですが、すべての大科学者はなぜメモやノートを残すのでしょう? 現代の理解によれば、それは人が物事を理解するためには物事を表現する言葉や図形が必要であり、この言葉や図形を自分から外にいったん出して観察する必要があるからだそうです。

 人は考えるときに無意識に言葉を口にします。言葉無しで考えることすら想像できませんね。ここまでは100%誰でもやるものです。しかし、言葉は消えてしまい、せっかくの表象も失われます。そこでノートの出番です。時間とともに消え去る言葉や考察をノートに書けば数時間の考察をひとめで見渡せますね。おそらく、これが重要なことなのでしょう。

 つまり、ノートに記録することによって、ごく短時間の1次元記憶をたよりにしていた思考が、長い時間+空間の3次元記憶を利用することができます。つまらない計算ですが、私の場合10秒の短時間記憶として毎秒10ビットの神経反応があるとしても100個ビットぐらいの情報かな。これがノートならあっという間にキロバイト級になるのは想像できるでしょう。たとえば2週間前に考えたメモなんて、ほとんど覚えてもいませんが、パラパラとめくれば思い出せます。
 研究は書くことがすべてだといえるぐらいですね。書かなければ電卓並みの能力がノートを利用することによってパソコンになります。これは絶対です。

 文章が出てこない! と嘆くあなた。誰も最初から名文なんて出てきやしません。断片的な文を書き、眺め、組み立てなおすんです。断片的な文も書かないでまともな文章を書こうとするのは、種をまかないで収穫を得ようとするのと同じです。

 まともな計画が立てられない!、まともなレポートが書けない!、と嘆くあなたも同じです。さらに言えば、まともに話ができないと言う方も同じです。人間は始めから人の前で話しができるわけではありません。話のうまい人間は、その裏で莫大な研究と努力を重ねています。私はかなり多くの教授を知っていますが、研究発表ではなみだぐましいほどの努力をしています。10分の研究発表にパワーポイントで50枚の図を作り、これを10枚に減らすのに1週間ぐらいかな。

 話題がずれました。けっきょく研究とは未知の事象を知ることです。開発も未知の事象を知り製品にすることですから本質は同じ。しかし開発で少し違うのはターゲットが明瞭なことです。だから開発はターゲットにいたる道を探す探索活動が主になりますね。しかし研究はターゲットそのものを明瞭にする過程が研究なのでノートを残さない人にはできません。もし、あなたがノートを残さずにできているならば、人類史にまれな天才なのか、または、たいした研究者ではないと言うことです。

 ノートを作るのは、別人となってしまう明日のあなたのためであると同時に、明日のあなたから見て別人の過去のあなたとの連続性を持たせるためです。時間を越えた存在が別次元のあなたを作ることは請合います。ぜひ、ノートを記憶の補助手段として利用してください。
 古いけれど偉大な科学者や技術者、中世のダビンチやニュートンなどの先人は多くのメモが残っていることからして、たぶん一般的な方法ではないかとも思います。
  • いくつ課題があっても常に1冊のノートを使う。同時に2冊以上のノートは良くない
  • ノートは他人の話や講義を書き取るためのものではない、自分の考察過程と実験記録を記す
  • 間違いは修正する、ボールペンでもいいが整理性は鉛筆がいい
  • 絵や図はPCよりもノートに書くほうが自由で早い
まとめること:
 メモはそのままではいけません。完成したときはもちろん挫折したときなど、ひと区切りついたときには、その時点できっちりと整理しておきましょう。砂場で山を作るときも時々つき固めておけば高い山ができます。整理するってことは、砂上の楼閣ではなくちゃんとした築山を作るために必須の条件なのです。

おまけ:
 あれやこれや試行錯誤と考えをめぐらして夢の中に記号や図が出てくるようになれば打開は近い。そこまでがんばらなくっちゃ無理ですよ。

end