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実験・観測レポートのまとめ方

数理設計研究所 玉置晴朗
2001/07/10 - 2008/03/09
Index
大枠指示では理解できない当社の研究員に与える

 そもそも実験や観測は何のために実施されるのか? この問いに答えることなくしてレポートのまとめ方もへったくれもありゃしない。その人間的な動機、行為、結果、考察までを一貫して含むものが実験・観測レポートである。
 科学や技術の研究で作られるレポートは、未来の他人である著者および他人が参照して、過去の実験や観測を追体験できるようにすることが目的だ。追体験するためには、実験や観測をした当事者が感知した事実のみではなく、その事実に関係する重要な環境要素を記述しておかなければ全体像の再現ができない。
 科学性は、高価な測定器で測定すれば獲得できるわけではない。科学性とは他の誰かが同じ環境条件で同じことをしたら、おそらく同じことが事実として得られる(だろう)ことであり、違った結果が得られるのなら別の理解への転換を可能にすることだ。したがってレポートには再現性を満足する記載がなければいけない。繰り返して言おう、再現性とは実験者の目論見と願望を含めていなくては不完全だ。良い文書を作ろうなんてタワゴトを吐く前にやるべきことがいっぱいだ。そこで、発起からまとめまで、一連の作業とレポートの関係と考察を書いておく。

実験計画書の作成

実験着手する前に検討するための共有文書
解説 チェックリスト
 そもそも実験や観測は何のために実施されるのか? この問いを明快にしない実験は無駄に終わる。
  • 計画を立て、実験結果を利用する全員に計画書を回覧して計画を確定する
    • 計画書の必須内容 → 目的、環境、手順
    • 実験室内でも同じ実験は2度とないと心得て十分に検討しておくことだ
  • 測定器の校正、手配、実験対象の事前分析と準備、起きそうなトラブルを想定して対策をする
    • デジタル表示、高価な測定器の表示を信じる者はおばかさん。デジタル表示したいだけなら10桁だって簡単に出せる。特に温度は測定系の原理的な考察をしておくべきだ。
    • 一部でも予備実験が可能なら試みておく
  • 試作装置
    • 野外や別場所での実験では必ずエージングしたものを使おう、前日や当日にやっと動いたものは室内実験にとどめるべきだ
  • Why なぜ実験することにしたのか
    • 新規なら目標、または過去の考察から、未解明案件や解決課題の言明
  • When いつ
  • Where どこで
  • Who 誰が Whom 誰と
  • What 何を知りたいのか whyの目的だ
  • How どんな方法で
    • 実験手続きの選定理由、参考情報
  • HowMatch どんな資源で
    • 資材リスト
    • 人的割り当て、監督、作業者、撮影者
    • 資金、人的コスト
  • クズ文書による会議は人的資源の無駄遣い
    • 読みやすいか
    • 概要は最後に書きなおしたか
    • 本チェックリストを満足するか

実験メモ=ゼロ次記録

実験者が保持する私的な文書や資料
解説 チェックリスト
 即座に実験記録を作成すべきである。実験をそのまま再現して後で評価するための原始資料となる。実験途上ではメモなどとしているが、これをそのままSCANして写真を組み立ててもいいが、これはゼロ次情報と言いたい。
 実験メモを清書し、すべての写真やファイルを参照する完全な情報になる。
  • 写真、ビデオ、メモ、データロガなど万全の記録
  • 実験中はよく観察し、気がついたことはすべて記録し、気がつかないことも記録できるように写真や自動測定器を利用するのもいいだろう
  • 室温、天候、日照の記録
  • When いつ、Where どこで、Who 誰が Whom 誰と
  • What 何をした
    • ファイル、写真を実験情景と対応付けるメモ
    • すべての情報を捨てないこと
    • 大量の写真、周囲写真
  • HowMatch どんな資源で
    • 測定機、資材リスト
    • 人的割り当て、監督、作業者、撮影者
    • 資金支出項目、人的コスト
  • 実験を再現できるか
    • 汚いメモはミスが多く使い物にならない
    • もれなく収得、間違いは無いか

実験メモの整理 1次記録

最初の実験結果の共有文書
実験に要した時間程度で提出する。3時間で終わる実験なら当日には公開。
解説 チェックリスト
 実験メモの整理は他者に提供するための原型なので、その小集団共通のフォーマットで記載する。勝手に書けば再利用できず、死に情報となる。共通フォーマットであれば、仲間が生に近い実験記録を観察することが可能になる。もちろん未来の当人にとっても大きな助けとなることは請けあう。
 この文書は実験計画書を複製して追記する最初の事後文書になる。公開された段階で、計画書は参照されなくなっても良い。ただし捨てないこと。
  • 実験後に即座にするべき作業である
  • 記録を、原形保存して内部公開する。
    • メモ類は高解像度スキャナで読み込み
    • ファイル類は無修正でそのまま
    • 内部公開すれば(間抜けなあなたより)能力のある第三者が情報を抽出でき、おもしろいことを示唆してくれるだろう。絶対に整理してから共有しようなどと思ってはいけない。
  • レポート作成の前に「即座にするべき作業」として分けた理由は、生情報そのものが持つ威力を利用するためである。あなたがいじりまわし、含まれている大事な情報を失う前に共有の手続きを踏むのだ。これができない者は、まともな研究者にはなれない。
  • Why なぜ実験することにしたのか
    • 新規なら目標、または過去の考察から、未解明案件や解決課題の言明
  • When いつ、Where どこで、Who 誰が Whom 誰と
  • What 何をした
    • 掲載情報は少し選択整理するが捨てない
    • ファイル、写真を実験情景と対応付ける
    • 大量の写真、周囲写真
    • 解釈、実験評価の感想レベルで良い
  • How どんな方法で
    • 実験手続きの選定理由、参考情報
  • HowMatch どんな資源で
    • 測定機、資材リスト
    • 人的割り当て、監督、作業者、撮影者
    • 資金支出項目、人的コスト
  • 実験を再現できるか
    • 概要は最後に書きなおしたか
    • 読みやすく清書してあるべきだ
    • 間違いは無いか
    • 本チェックリストを満足するか

実験レポート

共有文書
実験に要した日数以内に提出する。1日の実験なら翌日には公開。
解説 チェックリスト
 この文書は実験メモの整理文書をコピーして追記する。全体の流れを含み、当然ながら実験の評価と将来に向けての考察が含まれていなければならない。

 これを共有し、説明すること。単に提示するだけでは駄目であり、この文書を提示しつつ全体概要を口頭で説明しなければならない。別文書、写真、資料を見せなければならないのなら本文書が不出来だということの証明かもしれない。
  • さて、おもむろにレポートを書こう。翌日のあなたは前日に記述したあなたとは違う目で見ることができる。共同研究者がいれば、それらにも公開すべきだ。共同研究者は別の目を得る唯一の手段であり、それが共同してする研究作業の優位性なのだよ。
  • あなたは、どんなにがんばっても他人の目にはなれない。それをまさに共同研究者が補助してくれる。他人の目をもたない独善的なクソレポートなど読む価値は無い
  • レポートは(ひとりで作るにしても)、複眼的な評価作業によってしか良い物にならない。科学は宗教に似ているが決定的に違うのは他者の目による評価を前提としていることなのだ。よーく心して欲しい。
  • 自分だけでレポートを作り上げられるという者は、少なくとも私の周囲にはいない。まあ、あなたが私や彼らより飛びぬけて優秀だと自負するのは勝手ですがね。
  • Why なぜ実験することにしたのか
    • 新規なら目標、または過去の考察から、未解明案件や解決課題の言明
  • When いつ、Where どこで、Who 誰が Whom 誰と
  • What 何をした
    • 掲載情報は選択する、捨てないこと
    • ファイル、写真を実験情景と対応付ける
    • 大量の写真、周囲写真
    • 解釈、実験評価の感想レベルで良い
  • How どんな方法で
    • 実験手続きの選定理由、参考情報
  • HowMatch どんな資源で
    • 測定機、資材リスト
    • 人的割り当て、監督、作業者、撮影者
    • 資金支出項目、人的コスト
  • 考察
  • 概要を5行ほどでまとめること(最後に)
    • いつ、Where どこで、Who 誰が
    • 実験して、どうなったのか
    • 未解明案件や解決課題の言明
    • 考察による結論
  • 文書編集
    • 語句、単位の間違い
    • 読みやすく、おもしろいか
    • 図や写真の割合30%、注釈は必須
    • 本チェックリストを満足するか

文書構築の流れ

計画 メモ整理 レポート
Why なぜ実験することにしたのか
新規なら目標、または過去の考察から、未解明案件や解決課題の言明
When いつ
Where どこで
Who 誰が Whom 誰と
What 何を知りたいのか 何をした 何がわかった?
How 実験方法の理由、参考情報 実際の実験記録 選択した実験記録
結果 予測 簡単な考察があってもいい 結果の考察

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