ひとつ前へ  叶迫攝ン計研究所Topへ   記述責任者名倉 裕 目 次

レイテ島地すべり測定記−1
フィリピンへ

(1) フィリピンへ
  1. 発端
  2. レーザースキャナは長距離型が良い
  3. 電源の準備は怠り無く
  4. フィリピンへ
(2) マニラの一日
(3) 現地(Guinsaugon)へ
(4) 堆積地を一望の下に
2006/04/09 株式会社 数理設計研究所 名倉 裕 

 2006年2月17日、フィリピン南レイテ州、Guinsaugon(ギンサウゴン)で大規模な地すべりが発生しました。
 これはレーザースキャナで地すべり地形を測定した行程の記録です。
 3月19日出発。現地に21日午後到着、24日まで測定を実施、26日に帰国しました。
 調査団の構成は「フィリピン・南レイテ地すべり調査」(玉置筆:http://www.madlabo.com/mad/research/200603Leyte/)を参照して下さい。

  1. 発端

      「LMS-Z420(以下Z420)でフィリピンでの測定は可能ですか」消防研究所の新井場さんから、メイルで問い合わせがありました。「Z420の用意はないが、和泉測量に依頼できるかもしれない。」と回答。玉置が「長距離を測定できるLPM-2Kが必須ではないか」と応じました。 

    フィリピン(赤丸内レイテ島)
    (MSN Encarta World Atrasから)

    レイテ島南部Guinsaugon
    (MSN Encarta World Atrasから)

    Guinsaugon(ギンサウゴン)崩壊地
    USPACOM WEB から
      
  2. レーザースキャナは長距離型が良い

     2km以上の範囲を測定できる長距離型と、1km前後の範囲を高速測定できる高速型。2種類のレーザースキャナが候補に上がりました。期間、手間を考えると両方の運用はできません。

    有効距離

     長距離型のLPM-2Kか、高速測定のZ420か。
     崩壊地の規模をアメリカ陸軍の写真、衛星画像から推定すると、源頭部から堆積部まで3km以上の距離があります。LMS-Z420の有効範囲は1km、LPM-2Kは2km以上。どちらも土砂堆積地の端から源頭部までは届きませんから、複数箇所で測定する必要があります。
     LPM-2Kは、崩壊地中央まで行ければ端から端まで測定できる可能性があります。しかし地形の凹凸から陰になる地域が出るため、少なくとも2、3ヶ所での測定が必要と予想できます。Z420は崩壊地内外を移動して、5〜10ヶ所で測定する必要があると思われます。
     移動時間を除く測定時間は高速型のZ420が短く、LPM-2Kの詳細測定は1ヶ所あたり4〜10時間。Z420は30分から1時間あれば完了します。
     崩壊地内外を容易に移動できるならZ420、移動に大きな負荷があるならLPM-2Kです。

    天気

     天気が悪ければ3日間なにもできないかもしれません。
     報道された写真と衛星図では、源頭部の尾根近辺はいつも雲に覆われています。雲や霧があればレーザー測定は不可能ですが、雨ならLPM-2Kは影響をあまり受けません。Z420は不可能ではなけれど影響があり、有効距離がかなり小さくなります。
     天気の予測が困難なら、LPM-2Kを選びます。悪天候では移動も困難です。

    結論

     崩壊地内に踏み込めるか。
     周辺地域を通行可能か。
     天気の安定性はどうか。
     一切がわからない中では、LPM-2Kです。雨が多ければあちこち移動する事はおろか、1つの測定地点にさえ到達できないかもしれません。準備を進める内に、あちこちから図や写真が公開されました。崩壊源頭部まで2kmくらいまで近づける可能性がありそうだと見えました。LPM-2Kでも源頭部が測れるかどうかは疑問でしたが、ほとんどの範囲と輪郭は測定できる。それでも滞在中、悪天候が続けば、成果ゼロがあり得ると考えていました。 

    長距離型レーザースキャナ
    RIEGL LPM-2K
    Guinsaugon崩壊地を測定中

    高速型レーザースキャナ
    RIEGL LMS-Z420i
     現地では、崩壊地へのルートや崩壊地内を歩くのは思ったよりずっと容易でした。天候に恵まれ、荷役の手伝いがあって、歩きにくい崩壊地内を私達スタッフが20kgを背負っておろおろすることもありませんでした。ですから、LPM-2KとZ420の両方があれば、更に素晴らしいデータを手にできたかもしれません。LPM-2Kで広域を測定する間に、陰になる部分をZ420でどんどん測定していけば良いのです。
     しかし崩壊地内は崩壊危険地帯。ゲリラ出没の情報もあって、2チームに分かれての活動は困難でした。暑さと湿気は予想以上で体力を消耗し、1日1ヶ所の測定地点に到達するのがやっとの事でした。
     和泉測量のZ420はほとんど新品。課税対象額の大きな機器を国外へ持ち出す、他国へ持ち込むのはいろいろな困難があります。無事持って帰れるかどうか、保安上の大きなリスクもあります。 国内なら迷わず、LPM-2K、Z420の両方を持って出かけたでしょう。
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    右図は鄭炳表氏(消防研究所)作成の地すべり地形図。この図は測定計画を立案するために一番役立ちました。
     
  3. 電源の準備は怠り無く

    測定装備

     レーザースキャナ(LPM-2K)本体、三脚など普段と変わらぬ装備。違うのは電源です。2年前の中国、三峡ダム測定で電源に苦労した教訓を踏まえて、電源は充分以上と思える用意をしました。徒歩で測定地点へ移動する時、発電機は持ちません。鉛シールバッテリを数個持って行きます。しかし飛行機に持ち込めず、フィリピンへ持っていけません。そこで玉置、矢澤両氏に相談した結果、ニッケル水素乾電池をパックにして使うことにしました。乾電池なら飛行機でも持ち込めます。
     単一型を12個直列にすると14.4V、10AH。6個づつ1パックにすると7.2V。ラジコン飛行機用充電器で充電可能です。2パックを直列にした1ユニットで使うことにして、5ユニットを用意しました。パソコンの電源としても使えて、レーザースキャナを20時間くらい運用できます。万が一、滞在中に充電できなくても測定できます。
     測定用装備は、機器、三脚、電源、予備パーツ、修理道具など、全部で50kgを超えました。
     
     14.4V10Ahのニッケル水素バッテリは鉛バッテリに比べれば軽いのですが、それでも2パック1ユニットは2kgあります。(13.8V、7.2Ahの鉛シールバッテリは2.5kg。)これが5ユニットで10kg。3ユニットは宿に置き、常時2ユニットを携帯しました。
     噂に聞いた停電も無く、宿の商用電源はテスターで測ると241V。そのままでも使えましたが、トランスで半分に降圧して充電に使いました。
     
    ( コンセント→トランス→直流電源装置→充電器→バッテリ )
      AC240V   AC120V   DC14.8V    定電流 
     
     測定を終えてくたくたで帰って来た後、充電を怠っても大丈夫。ちゃんと充電しましたが、予備があるという安心感がありました。
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    ニッケル水素電池6個パック2個。
    2個パックを直列接続して1個のプラグに出力しています。

    個人装備

     フィリピンならでは必要な装備。暑さ、防虫、伝染病対策。ホテルが無い時の野営。電源。
     暑さには夏の着衣ですが、日差しが強そうなので淡い色のシャツを用意しました。防虫、特に蚊対策のため長袖。特に蚊は伝染病、マラリア、デング熱の媒介者として注意されたため、頭からかぶる防虫網も用意しました。
     足は通常長靴が多いのですが、今回は登山靴かトレッキングシューズ。重荷を考えると登山靴が良いのですが、慣れたローカットのトレッキングシューズと、真新しいくるぶしまで包むハイカットのトレッキングシューズの2つを用意しました。スパッツともに。

    渡航手続き

     飛行機、宿泊は近畿日本ツーリスト。変更可能だったはずの便が固定になるなど、一騒ぎありました。発電機などは持っては行けませんが、現地でレンタルできれば非常用として役に立ちます。現地調達物は消防研究所を通して、日本工営のマニラ支店花谷さんにお願いしました。
     レーザースキャナの国外持ち出しについて東京税関にお尋ねしたところ、「旅具通関範囲について」という資料をFAXでいただきました。外国製品ですから、持ち帰った際に輸入関税を取られないため、税関で確認手続きをします。インボイス、課税価格を証明する書類、そして輸出貿易管理令の非該当証明書(リーグルジャパンにお願いしました)を用意しました。
     フィリピンの入国手続きを容易にするため、PHIVOLCS(フィリピン火山地震研究所)の招請状を用意してもらいました。

    出発まで

     現地、マニラ、タクロバン(レイテ島)情報の収集。装備の準備、点検。群馬、東京、京都、マニラに散るメンバーとの情報交換など、あっという間に出発の日が来ました。出発の前日のホテルの手配(渡航中の駐車場も兼ねる)など数多い細かい作業は矢澤君に頑張ってもらいました。
     
    装備一覧
     
  4. フィリピンへ (3月19日)

    出国手続き

     旅の最初の関門は、出国手続きと税関です。
     税関では、海外製品のレーザースキャナを持ち出す事、持って帰った時に輸入品ではない事の証明をもらいます。係員が少ないためか、待ちました。以前、関西空港でしたように事前に通知しておけば「現場に言い送っておきます」と、待機してくれたかもしれません。手続きそのものは玉置任せ。順調だったようです。
     これで時間をとられ、飛行機に搭乗したのは「搭乗の最終お知らせ」を何度も聞いた後でした。

    入国手続き

     マニラ空港。パスポート・チェックの行列。待つ時間の長い事。機内で一緒になった営業マンの言う通りでした。預けた荷物は幸い欠ける事なく手元へもどってきました。
     ベルトコンベアの荷物を待っている内に、私に呼び出しがあったようです。呼び出し先はいずこ?行くと、PHIVOLCSのおかげで別扱いの通関。招請状、品物リスト、写真(レーザースキャナはこういうものだ、という)を揃えてOK。書類に限らず用意が周到な親方、玉置。英語は笹澤と、先のパスポート・チェックの列で合流した消防研究所の新井場さん。頼りになる面々のおかげで無事手続き完了。
     空港を出たところで、全メンバーが現地に合流しました。

    マニラ空港を出て駐車場で。
    左から、私、玉置。右端は今回の測定で終始お世話になった、日本工営現地駐在の花谷さん。

「マニラの一日」に続く