ひとつ前へ  叶迫攝ン計研究所Topへ   記述責任者名倉 裕 目 次

ダム湖底の3次元測定

宇奈月ダム排砂 2006/07/01-02
  1. ダム湖底の測定
  2. レーザースキャナの選択
  3. 測定地点・測定対象
  4. 群馬から宇奈月へ
  5. 霧よ晴れろ!
  6. 順調な測定
  1. 余話
  2. 排砂の推移
  3. 測定諸元 観測地点A
  4. 測定諸元 観測地点B
  5. 成果
  6. 謝辞
2006/07/07 株式会社 数理設計研究所 名倉 裕 

1.ダム湖底の測定

 宇奈月ダムの排砂時、ダム湖底が姿を現します。水流は上流出し平ダムの土砂を運んで堆積させては削り、多くの流木を運びます。湖底は砂と泥が砂州、澪筋を形作り、時々刻々と変化します。排砂時の湖底は水が途切れる事なく流れ、立ち入る事はできません。この形状を測定、変化を追跡するにはレーザースキャナは最適です。
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国土地理院 1/25000地形図から引用

2.レーザースキャナの選択

 2003年以来、私たちは排砂時の湖底を測定しています。長距離型レーザースキャナ Riegl LPM-2Kで砂州の変化、断面を、高速型レーザースキャナ Riegl LMS-Z210 で近距離の湖底変化を観測してきました。しかし LPM-2K では測定速度が遅く、部分的な測定しかできません。LMS-Z210 では有効距離が足りず、350mの湖幅の半分しか届きません。湖底に堆積する泥は水分を含んで、レーザー光の反射強度が弱く、通常の半分くらいの距離しか測れませんでした。
 今回は(有)和泉測量の協力を得て、高速長距離型レーザースキャナ Riegl LMS-Z420i を使いました。水平方向180度の範囲を LMS-Z210 より詳細に測定して10分かからず、400〜500mの有効距離が期待できます。尾の沼公園から見える砂州はほぼ全部が測定可能です。
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尾の沼公園から
排砂中の上流側を望む。

3.測定地点・測定対象

 測定地点は2ヶ所。それぞれの地点にレーザースキャナを配置しました。測定速度が遅い長距離型は、必要に応じて断面、部分測定に使います。
  1. 観測地点A ダム監理棟
    ダム監理棟の階段2階踊り場に、高速中距離型レーザースキャナ (LMS-ZS210) を設置。
    ダム提体から湖面橋までの区間を対象に、ログモードで連続測定。
     
  2. 観測地点B 尾の沼公園
    公園の歩道上に高速長距離型レーザースキャナ (LMS-Z420i) を設置。
    湖幅が最も広い地点で、砂州、澪筋の生成、消失を観測。
    変化の少ない間は間歇測定、変化が激しい時は連続測定。
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尾の沼公園のLMS-Z420i
湖面に背を向け基準点を測定中

4.群馬から宇奈月へ

 排砂の開始は、出し平ダムと宇奈月ダムの流入量等を検討して決定されます。増水して、それがある程度続くと考えられる時、始まります。ですから測定はたいてい雨の中で行います。今年の排砂は速やかに決まりました。好天が続いた後降り出した雨は、私達が思ったより雨量が多く、降り続けたのです。
 7月1日の早朝5時ころ、排砂が始まるらしいという知らせを受けました。測定機材を車に積んで、同行の研究所代表、玉置と、和泉測量、奥泉さんに連絡。群馬県太田市の研究所から宇奈月ダムまで、およそ5時間かかります。黒部河川事務所の緊急情報掲示板で確認すると、決定は午前4時10分。排砂ゲートが開くまで12時間あります。私と玉置が午後早々に宇奈月ダムに着いた時には、他のメンバーは揃っていました。
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7/2 10時 終わった!眠い!

5.霧よ晴れろ!

 レーザースキャナの大敵は霧です。目に見えないほどのモヤでも、有効距離は短くなり、目に見える霧は測定を不可能にします。昨年は霧のため、僅かな時間しか測定できませんでした。
 そして今年、ダムに着いた私達を迎えたのは、湖面を覆う霧でした。霧は上流から下流に流れてダム提体に溜まります。深夜に始まる提体付近の測定のために、霧は早々に晴れて欲しいのです。雨なら良いのです。
 夜になって、霧は晴れました。雨は時々強く降って、ダムの照明に照らされて霧のように目前を流れて行きました。でも雨なら測定はできます。
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湖面の霧

6.順調な測定

 ダム提体から湖面橋までの間の土砂移動を測定する中距離型レーザースキャナの役割は、雨天の中、夜半に完了しました。
 尾の沼公園では未明から間歇的に湖面一帯を測定しました。例年とは砂州の生成、消滅の様子がだいぶ違っていて、眠っていた面々が起きては「いつもと違う」とつぶやいて行きます。雨はほぼあがって、時々にわか雨。水量はもう増えそうにありません。変化に乏しい排砂になったようです。
 無事、レーザースキャナ測定を終えたのは2日午前10時。基準点を測量し終えたら正午近くになっていました。
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排砂ゲートへの導水路が現れた

7.余話

 通例、排砂の開始決定は思わせぶりでなかなか始まらず、時には週に2回現地まで行って中止と、空振りした事もありました。ところが今年は予兆が少なく、すんなりと決まってしまったので、かえって焦ってしまい、忘れ物が多くなりました。

・浮子
 流速を測るための浮子。だれもが忘れたようです。浮子に反射シートを貼って流し、レーザースキャナ連続測定。一定時間間隔で浮子の位置を測定します。

・電源
 レーザースキャナを動作させるための、13.8V直流電源装置が突然壊れました。いつもは予備を持っているのですが、今回に限って忘れてきました。壊れたのも初めてです。
 14Vのニッケル水素電池パックを5個持っていたので、測定に支障はありませんでした。ニッケル水素電池1パックは14.4V10AH、約3時間測定できます。
 → 参考:レーザースキャナ電源 ニッケル水素電池を試す

・操作ミス
 LMS-Z420iで連続測定。操作ミスで1時間分のデータを失いました。
 ログモードで測定すれば良かったと反省。

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ニッケル水素バッテリーパック
単一電池6本×2で1ユニット

8.排砂の推移

7/1 4:10 排砂の実施決定
7/1 21:30 排砂ゲート開く
7/2 2:32 自然流下開始
7/2 14:32 排砂ゲート閉操作(全閉ではない)
自然流下完了
水位回復
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排砂ゲートは年に数回開く   ・

9.測定諸元 観測地点A

地点 ダム管理棟 南階段2階踊り場
対象 ダム提体から湖面橋までの湖底
レーザースキャナ Riegl LMS-Z210
時間 開始時間 7/2 1:00a.m.
終了時間 7/2 6:00a.m.
注目時間 7/2 2:00a.m.前後
時間間隔 2分30秒〜5分
角度範囲 水平 約160°
垂直 俯角10°〜50°
角度ステップ 水平 0.14°
垂直 0.11°
距離範囲(湖底) 60〜170m
特記事項 通常は測定できない水面の測定データが得られた。俯角が大きいためレーザー光の表面反射が少なく、濁度が高いため水面近くの反射量が大きかったためと考える。



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データ点群鳥瞰図−1
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データ点群鳥瞰図ー2

10.測定諸元 観測地点B

地点 尾の沼公園 歩道上
対象 ダム湖底
レーザースキャナ Riegl LMS-Z420i
時間 開始時間 7/2 1:00a.m.
終了時間 7/2 10:00a.m.
注目時間 7/2 6:00a.m.〜10:00a.m.
時間間隔 1:00a.m.〜6:00a.m. 1時間間隔 6:00a.m.〜10:00a.m. 連続測定
角度範囲 1:00a.m.〜6:00a.m. 水平 約200°垂直 俯角0°〜40°
6:00a.m.〜10:00a.m. 上流側砂州だけ
角度ステップ 1:00a.m.〜6:00a.m. 水平 0.06°垂直 0.06°
6:00a.m.〜10:00a.m. 水平 0.06°垂直 0.01〜0.06°
距離範囲(湖底) 50〜500m
特記事項 操作ミスのため、1時間分のデータを喪失
データ点群鳥瞰図
作図:(有)和泉測量拡大(PDF)
7/1 22:25 まだ砂州は見えていない
左岸側上空から鳥瞰
拡大(PDF)
7/2 1:09 砂州が現れた
下流側から鳥瞰

拡大(PDF A3)
7/2 2:09 砂州が拡大した
下流側から鳥瞰
拡大(PDF)
7/2 10:09 砂州の生成、消失が続く
左岸側上空から鳥瞰
カラーデータを付加

7/2 6:36 観測地域パノラマ写真

11.成果

 2003、2004年の排砂測定データは、次の論文に紹介されています。

12.謝辞

 この測定は、京都大学大学院工学研究科 角哲也氏のもと、各方面の方々の協力により実施されました。
 感謝致します。
  • 黒部河川事務所
  • 応用地質株式会社 村崎充弘氏 他
  • (有)和泉測量 奥泉春夫氏 他
  • (株)数理設計研究所

以上