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大型地形模型を切削する(1)
始まりと試行

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2008/02/06 - 02/15
(株)数理設計研究所 名倉 裕
目次
  1. 始まりと試行
  2. 切削データの作成
  3. 60cm四方浅間山地形
  4. 1m四方浅間山地形の切削
 ページ内目次
  1. 地形模型の切削
  2. 板の切り出し用マシン
  3. Gコードを入力
  4. 運転
  5. 発泡ポリスチレンを削る 
  6. 切削模様
  7. エンドミルの長さと飛散防止ガード
  8. 1/10000模型

1.地形模型の制作

 以前から、数理設計研究所、太田研究室にある小型NCフライス盤で、小さな地形の切削を試みていました。→ 地形立体模型の制作
 小型でも、いくつかのブロックに分けて、大きな模型を作ろうという企画がありました。でもA4版より少し大きなものまでしか切削できないフライス盤で、分けて加工、接着するのは、容易な作業ではありません。
 レーザースキャナ測定で共同研究を進める、遊具メーカーの大永ドリーム株式会社が、大型のNCフライス盤を購入しました。1m×3mのものまで加工できます。地形切削になんとも都合の良い道具とばかりに飛びつきました。このNCフライス盤は木工用です。主に板をカットする用途に使われます。ですから2次元加工は得意ですが、3次元形状を削り出すには、工夫が必要です。そこをなんとか工夫で乗り切って、地形を削り出そうという試みを始めました。
 かねてから、フィリピン、レイテ島で調査したギンサウゴン(Guinsaugon)崩壊地の地形モデルを作るという課題があります。数理設計研究所の太田研究室にはNC(数値制御)フライス盤がありますから、加工できます。大永ドリームの社長、永島さんは、浅間山を彫ろう、FRPの型を彫ろうと、3次元加工に大変乗り気です。
 第一目標は、浅間山の1/10000模型です。まず1/50000、20cm四方の模型を作り、その後、1/10000を目指します。データは国土地理院の数値地図50mメッシュ、一部は10mメッシュを用意しました。


SHINX 木工用NCフライス盤

2.板の切り出し用マシン

 大永ドリームのNCフライス盤は、SHINX というメーカーのものです。板を切り出すのに便利な道具ですが、3次元曲面加工には便利にできていませんでした。大永ドリームでは通常、操作メニューから「自動プログラム」というモードを選んで操作しています。図形入力方式で、ガイドに従って操作すれば、加工データができあがります。CADから出力したDXFファイルは読めますが、Z軸のデータを読みません。垂直方向のデータは、ソフトウェア上で指定しなければなりません。
 地形を切削する時、複雑で膨大な量のデータの1つ1つにZ値を設定するのは、現実的ではありません。なんとかZ値を読ませられないか、とも考えましたが、もう1つの方法を採る事にしました。

3.Gコードを入力

 DXFデータにZ値を加えたデータは、NC加工用のGコードという、数値制御機器では標準的な機械言語に変換されます。このGコードが機械を動かします。外部で作成したGコードを、制御用ソフトウェアに読ませられれば、NCを制御して3次元形状を切削できます。
 取扱説明書を読む内に、メインメニューの「自動運転」を選択すると、外部のテキストファイルを読める事に気がつきました。Gコードで書いたプログラムは、数里設計研究所の玉置が、NCフライス盤を使うため作ったものが多くあります。早速、読ませてみました。しかし「***が足りない」「***がおかしい」といったメッセージが表示されます。何かが足りないようです。

 通常使っている「自動プログラム」モードでは、できあがったGコードが見られます。Gコードで板を加工する時、座標データの前に設定コードがたくさん並んでいるのが見えます。電話でメーカーに聞いたところ、G コードの最初にマクロを設定するのだそうです。刃物毎の設定値を含むらしく、この部分はメーカーがユーザーの注文によって作成するのだそうです。そうも言っておれないので、更に聞いたら、「自動プログラム」モードのG コードを参考にして作ってほしいとの事でした。これがGコードのヘッダ部です。

T5
G65 P9200 L1
M95
G218 G53
M105
G90 G00 Z 0.000 M189
M128
G219
T5
M99
M06
G53
G90 G00 Z 0.000
M92
T5
G65 P9000 L1
G219
T5
M99
M93
S6000
G04 X2.0
G61

 G65で示されるのがマクロをコールしている部分で、加工を実行する時には、マクロの中身まで表示してくれます。単純な形を加工する、簡単なヘッダは次のようでした。

M06
G53
G90 G00 Z0.000
M92
T5
G65 P9000 L1
M93
S6000
G04 X2.0
ヘッダ

 これを頭に付加して、最後には次の終了コードを付加しました。

M05
M02
トレイラー

 加工する座標データは、Gコードの「G01」コマンドの連続です。これが4万行余り続きます。これは国土地理院の50mメッシュ数値地図から浅間山の部分を取り出して、その座標値をGコードのフォーマットに仕立て上げたものです。変換ソフトウェアは自製です。

G01 X153.000 Y199.000 Z26.720 F300
G01 X152.000 Y199.000 Z26.760 F300
G01 X151.000 Y199.000 Z26.800 F300
G01 X150.000 Y199.000 Z26.800 F300
G01 X149.000 Y199.000 Z26.680 F300
G01 X148.000 Y199.000 Z26.720 F300
G01 X147.000 Y199.000 Z26.760 F300
G01 X146.000 Y199.000 Z26.880 F300
G01 X145.000 Y199.000 Z26.960 F300
G01 X144.000 Y199.000 Z26.980 F300
G01 X143.000 Y199.000 Z27.000 F300
G01 X142.000 Y199.000 Z27.000 F300
本体(3次元座標データ)

 こうしてヘッダ、本体、トレイラーを組み合わせて作ったテキストファイルを、制御用ソフトウェアに入れる事にしました。「自動運転」モードにして、ファイル名を指定すると、読みました。エラーメッセージは出ませんでした。

4.運転

 Gコードを読ませたら、思い通りに切削してくれるかどうかを試す事にしました。Gコードの1ステップづつを実行できますから、最初から1ステップづつ実行して、コマンドの意味も理解しようと考えました。標準的なGコードの意味は調べましたが、メーカーによって個性的な意味を設定できるコマンド番号があるようです。 

 エンドミルがセットされ、主軸が回転を始めました。しかしXY値がおかしいようです。奥右端の原点から出てきません。中断して、「自動プログラム」モードで動くGコードを見ました。座標地は全てマイナス値になっています。ヘッダがそのように設定しているのでしょうか。

 それならばと、XY値をマイナス側に設定しました。エンドミルの高さ位置は良さそうなので、Z値はそのままにしました。そしてGコード1行づつ動作させると、動きました。それらしく、浅間山をなぞるように動きました。それならばと、1m×3mあるテーブルの手前まで来るよう、マイナス値に一定の値を加えました。次は、こうして作った座標データの一部です。

G00 Z50.000
G01 X-1100.000, Y-2700.000, Z38.620 F3000
G01 X-1097.000, Y-2700.000, Z38.760 F3000
G01 X-1094.000, Y-2700.000, Z38.860 F3000
G01 X-1091.000, Y-2700.000, Z37.560 F3000
G01 X-1088.000, Y-2700.000, Z38.580 F3000
G01 X-1085.000, Y-2700.000, Z39.180 F3000
G01 X-1082.000, Y-2700.000, Z39.340 F3000
動作した座標データ部分

5.発泡ポリスチレンを削る

 思い通りの位置を動くように見えるエンドミルが、確かにそう動いているのか。スタイロフォームを削ってみました。エンドミルは直径10mmの標準(頭が平らな)エンドミルでしたから、階段状になりましたが、およそ地形を表していました。切削速度、エンドミルの回転数は、スタイロフォームでは問題はなかろうと、設定のままです。表面に毛羽立ちが目立てば、適当な調整が必要かもしれません。

 タレット(刃物台)には、6種のエンドミルが並んでいます。R3のボールエンドミルがありました。番号は3。ヘッダ文字列の中の「T5」を「T3」に変えました。そしてデータ間隔は2mm。X方向に1ラインづつ凹凸加工しながら、2mm毎にY座標をずらしていきます。20cmを削るために200往復します。時間は30分余り。

2mm間隔加工の浅間山

6.切削模様

 R3ボールエンドミルの2ミリ間隔切削では、切削ラインが模様になって見えてしまいます。
 1mm間隔なら良いか、と試すと、なぜか2mm間隔と同様の縞模様が出ました。このテーブルは、上に載せた切削材料を、ルーツポンプで吸引して固定します。このためテーブルにはところどころに穴が開いています。スタイロフォームのように柔らかい材料では、端を削る時、エンドミルの力で端が持ち上がってしまうのでした。刃物が中央から端へ、削りながら移動する時はほとんど持ち上がらず、端から中央へ移動する時は少し持ち上がります。往路と復路では切削深さが変わって、縞模様になったのです。
 端を使わなければ良いのですが、もったいない。それならと、時間が少しもったいないのですが、片方向だけ切削する事にしました。行きは切削、帰りは急いで戻します。こうして切削ラインや毛羽立ちのない、きれいな表面の、20cm四方、1/50000浅間山模型ができました。

1mm間隔片方向切削加工の浅間山

 切削後、着色を施した模型を取り上げた、大永ドリーム、永島さんのブログ「浅間山の立体地図を作る」

7.エンドミルの長さと飛散防止ガード

 上の写真の浅間山を切削する前に、1つの困難がありました。切粉の飛散防止ガードの枠とビニールスカートが、スタイロフォームの表面を傷つけてしまいます。エンドミルが短いためで、少し長く出してもらいました。長いエンドミルを買ってもらいましょう。

切粉飛散防止ガードが切削された表面を傷つける

 それでもビニールスカートが表面をなでるので、スカートめくりをしました。これで上下動40mm足らずの間、ガードが切削表面に接触しませんでした。

切粉飛散防止スカートをめくる

8.1/10000模型

 浅間山は、10km四方範囲の模型を作ります。1/10000では、1m四方の大きさになります。まず、その一部を、20cm四方に削りだしてみる事にしました。仕上がりの状態を見るためです。本番では、標高差も15cm以上になるため、長いエンドミルと、厚い材料を用意しなければなりません。エンドミルの長さや、飛散防止ガードが当たる都合で、約4cmの深さしか彫れませんでした。浅間山山頂を入れて、標高差400mの部分までです。飛散防止ガードを外せば、短いエンドミルでも、深さ約7cmまで彫れそうです。


浅間山と西北西にあるピーク

 荒削りの際、油断して飛散防止ガードのスカートめくりを忘れ、ガードに押しつぶされた火口が割れてしまいました。
 火口周辺や、西北西の山体の傾斜はきついのですが、滑らかに仕上がりました。
 山頂が平らな帯になっています。50mメッシュ地図の一次近似では、仕方がありません。10mメッシュを使おうかと迷うところです。

 次は、長いエンドミルと、厚い発泡材を用意して、本番模型の切削に移ります。
 幅1mの切削材料が容易に手に入るでしょうか。
 15cm以上の厚さを一度に切削できるでしょうか。10cmの厚さで、2回に分けて切削し、貼り合わせる必要があるかもしれません。


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  2. 切削データの作成
  3. 60cm四方浅間山地形
  4. 1m四方浅間山地形の切削