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大型地形模型を切削する(6)
1m四方浅間山地形の切削

作業中 写真集
2008/04/21 - 05/06
(株)数理設計研究所 名倉 裕
目次
  1. 始まり
  2. フライス盤の操縦
  3. 20cm模型を切削
  4. 切削データの作成
  5. 60cm四方浅間山地形
  6. 1m四方浅間山地形の切削
 ページ内目次 
  1. 1m模型ならではの工夫
  2. 素材
  3. 切削
  4. 貼り合わせて完成
  5. これからのために

1.1m模型ならではの工夫

1m模型では、60cm模型より更に工夫が要ります。
  • 上下2部分に分ける

     当初、長いエンドミルがあれば深く掘れると考えていたのは間違いでした。SHINXのNCフライス盤で、Z方向のストロークは250mm。充分なように思えますが、チャック下 160mmのエンドミルを取り付けると、ストロークは90mmしかありません。最大切削可能な深さは、125mmのエンドミルを着けて、125mmの深さです。
     1m四方のモデルの実際の標高差は1,560mです。縮尺1/10000では 156mmの深さを切削しなければなりません。人工構造物とは異なり、最高標高点の近傍に最低標高点がある事はまずありません。ですから90mmストロークでも、チャックやカバーを山頂に当てる事なく、100mm以上の深さを切削できます。しかし156mmの標高差は難しく見えました。シミュレータを作るのは面倒です。上下2枚に分けて切削する事にしました。上下2枚で、上側の標高幅 55.3mm、下は100.0mmとします。上側を小さくするのは、面積と厚さが小さな素材が使えるからです。
     
  • 小さな部分の切削

    標高が高い部分が、3つに分かれています。
    小さな部材をちゃんと加工できるでしょうか。
     
  • 正確に貼り合わせる

    上下に分けて加工した部材は、最後には正確に貼り合わせなくてはなりません。木材や金属に比べれば硬い素材ではありません。細い部分を手に持てば、くにゃくにゃと曲がります。
     
  • エンドミル径

    12mm径のボールエンドミルを使います。60cm模型で粗さは目立ちませんでしたから、1m模型ではちょうど良い太さでしょう。

青い部分は標高 1,007mから、2,007mまで。
サイズは1m四方。
赤い部分は標高2007m以上。50×70cmの
素材で足りる。

平面図で見ると、標高が高い部分の範囲が
わかりやすい。

2.素材

  • 切り出しと貼り合わせ

     標高の低い部分を削る大型部材と、高い部分を削り出す小さな部材を作ります。
     標高の低い部分は、1m×1m×15cmの部材を使います。2m×1m×20cmから切り出します。厚めに削って、やり直し代を残しました。
      この素材を切断するために、長めのエンドミルが欲しいと思いました。
     
     標高の高い部分は、70cm×50cm×6cmのものを作ります。20cm厚から削るのはもったいないので、手元にある2cm厚さのものを貼り合わせます。良い接着剤があるか、切削時に障害があるか、着色時にはどうかと、課題は残りますが、試します。2m×1m×2cmの素材の、劣化したり傷が入っている両面を削って、17mmの厚さにしました。これを4枚にカットしてスプレー糊で貼り合わせ、厚さ68mmの部材を作りました。 
     
  • フライス盤への固定

     フライス盤にはルーツブロワの吸引力で吸着、固定します。素材は硬く、いくらか反っているので、吸引はかなり困難です。大きなままなら、吸引しながら中央部に体重をかけてやると「ギュー」と音を立てて吸着します。しかし半分のサイズになると、うまく吸着しません。20cmを削って10cm余りにすると、弾力が出て吸着しやすいかもしれません。
     結局、片面を数ミリを削って平面を出しました。吸引で固く固定できるようになりました。こんな事を最初から考えないのは、経験不足そのものです。

20cm厚の巨大な素材は、既にエンドミル
の長さとストロークを合わせて5cmの余裕
しか残さない。

3.切削

  • 計画

     切削は2段階で行います。全て断面方向に切削します。等高線に沿った切削はしません。

    1. 粗切削
      エンドミルの刃長分だけ、掘り下げながら形を作ります。
      断面線間の距離(Y(奥行き)方向ピッチ)は粗く、7mmです。
       
    2. 仕上切削
      1mmづつ送りながら切削します。12mm径なら2mm送りでも大丈夫かと思いますが、1mmでも半日放置すれば出来上がります。切削経路を工夫すれば、半分くらいの時間でできる筈ですが、今回は休日を使って仕上ます。
       
  • 実施

     仕上切削を2mmピッチでやってみました。表面には切削の筋が残ります。ピッチを1mmに変更、やり直しました。
     粗加工と同じ高さで切削すると、14mm毎に傷が残りました。粗切削の片側で、彫り過ぎる現象があるようです。
     ピッチ1mmで、更に1mm掘り下げました。仕上切削時間は、1m四方を切削する下部では、1回あたり約半日、10時間余りでした。
     
     仕上切削後、表面を見ると、データメッシュ形が現れていました。元データは50mメッシュ。縮尺後は5mmメッシュです。5mmのTIN形状が、起伏の多い部分で目立ってしまいました。
     一次補間を、3次補間に変更して、曲線的なデータを作り、2mm掘り下げて、再度仕上切削しました。
     
    切削条件
    • エンドミル 12mm径ボールエンドミル
    • 回転速度 12000rpm
    • 切削速度 5m/min
  271828さんのブログから
 「日曜日は出たり入ったり
 「1m四方の地図製作中!

粗加工中の上部。スプレー糊で17mm厚
を4枚貼り合わせたが、加工に支障なし。
下端でバリが残らないよう、0.2mmベース
を削っている。
ベースは、通気性の板。端材を使った。
 

Y(奥行き)方向に2mmピッチの送りで仕
上げてみたが、切削線が残った。
この後、1mmピッチで再切削した。

4.貼り合わせて完成

  • 位置合わせ

     上部と下部を別々に切削しました。この貼り合わせは微妙な作業でした。上下が接する部分は同じ輪郭なので、合わせるのは容易と考えていました。しかし光の当て方を工夫しても、下側の輪郭が良く見えません。真っ白の素材で、思ったよりなだらかな勾配は、斜面と合わせ面の境目を明確には見せてくれませんでした。
     それでも傾斜の急な部分を選んで合わせてみると、良く合致しました。緩い勾配では、Z軸の僅かな誤差で輪郭が違ってきます。切削中に、上と下の寸法を測りながら、実は0.5mmほど調整しました。計算上、上部は更に0.5mm掘り下げる予定でしたが、輪郭が合うところで切削を止めました。どうして0.5mmの誤差が生じたかは、これから考えなくてはなりません。
     
  • 貼り合わせ

     上下の形が合致している事を確認したら、貼り合わせです。接着型スプレー糊を使いました。均一に、力をかけず塗れると考えたからです。
     使った接着剤は、案外粘度が高いもので、2つの不都合がありました。
    • 貼った後では、ずらして位置を変えられない。
      貼ったままではずらせないので、ずれた時は、裁縫に使う針を接着面に差し込んで剥がし、再度合わせました。
       
    • 塗る際に、端でくもの巣のようなはみ出しができる。
      はみ出しは、できるだけ手で取りましたが、そんな部分は硬化が早く、うっかりすると発泡材を一緒に剥がしてしまいそうでしたから、充分には取れませんでした。
     
     貼り合わせた後は重しとして、高密度ポリエチレンの切削屑が大量にありましたから、袋に詰めたものを上に置きました。全体に均一に力をかけるのに好都合です。
      
  • 完成

     できたものは、60cm模型に比べても、ずっと迫力があります。面積で3倍近くあるのです。上下を貼り合せたあたりで、少しずれているように見える部分がありまが、触ってみるとそうでもありません。くもの巣状にはみ出し、取りきれなかったた接着剤のせいでもあります。
     塗装すれば、滑らかになるでしょう。

    271828さんのブログから「浅間山完成、そして夏を感じる

上下を貼り合せて完成。
上部の色が濃いのは、ウレタン材が少し劣
化しているため。
 

60cm模型(向こう側)に比べると、ずっと
迫力がある。60cm模型はより細いエンド
ミルで切削すると良いかもしれない。

5.これからのために

 こうして、浅間山の2つの模型の切削は完了しました。しかし既に、次の準備が完了しています。次に備えて、試行錯誤を繰り返したまとめを記しておきます。
  • ボールエンドミル・サイズ

    本番の切削は全て、1つの12mm径ボールエンドミルを使いました。
    長さにおいて、より短いもの、長いものを揃えると、深い切削ができます。太さにおいて、より細いもの(例えば6mm径)があると、より繊細な切削ができます。
     
  • 裁断用エンドミル

    素材の外寸を、適当な大きさにカットするため、長めのスクエアエンドミルがあると便利です。
     
  • 表面粗さ

    1m模型では仕上加工の後、急斜面の一部に、僅かながらエンドミルの跡が残りました。塗装すれば消えるほどのものでしたから、放置しましたが、今のところ原因は不明です。
     
  • 貼り合わせ

    今回は目視で合わせました。2つのブロックの定位置に穴をあけ、3〜6mm程度の径の長い合わせピンを使うと、貼り合わせ作業が容易になると考えます。ピンは残しても良いし、下から抜いても良いでしょう。通し穴をあけ、最後に塞いでも良いでしょう。裏面に非貫通穴をあけるなら、裏返し加工が必要ですから、外形は6面ともしっかり加工しておく必要があります。
     
  • 接着剤

    粘度の高い接着剤は、合わせた後の修正ができません。粘度が低く浸透性が低いもの、少なくとも10分くらいは硬化しないもの、刷毛で塗るものが良いようです。後で機械加工するのではありませんから、強い接着力は要りません。
    ポリスチレンを使うなら、使える接着剤に制限が多くなります。
     
  • ソフトウェア

    多彩な入力データに応じて、入力データ形式のいくつかに対応しておく必要があります。メッシュ、ランダムなDEM、3次元ベクタ、など。
    現在はメッシュ、及びランダムな標高モデルに対応しています。



この一連の模型製作のため、次の方々に多くの協力をいただきました。
深く感謝致します。
  • 大永ドリーム株式会社 社長 永島さん(271828さん)、及び従業員の皆さん
  • シンクス株式会社 技術、及びメインテナンス担当者の方々

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