ひとつ前へ  叶迫攝ン計研究所Topへ   記述責任者名倉 裕

地上型レーザスキャナ測定


● 有効距離

・有効距離外は測れない

 遠隔地から測定対象地域内に入らず地形データが得られるのは、レーザースキャナ・システムの大きな特長です。土砂崩壊地などの危険地帯の安全な測定、川や海峡を隔てての地形測定が可能になりました。
 有効距離は大きいに越したことはありません。日本国内の地形測定は最低500m、できれば1km以上ほしいと考えています。1kmの有効距離があれば谷から山腹を見上げる陰の多い観測をせず、対岸の山腹から目標を横から、あるいは見下ろして観測できます。海外の大きな地形、たとえば中国の三峡ダム湖周辺、フィリピン、ギンサウゴンの大崩壊地では、1500mを超える範囲の観測が必要でしたから、2kmくらいの有効距離が望まれます。

・良い観測地点

 レーザースキャナ観測成功の最大のポイントは良い観測地点を見つける事です。良い観測地点とは対象が陰なく良く見える地点です。有効距離が充分大きければ、観測地点の候補地を広い範囲に求めることができます。

・悪天候に阻まれず

 雨中でもレーザースキャナは観測できます。しかし有効距離は小さくなります。レーザースキャナは雨よりモヤで影響を受けます。人の目にはかすかなモヤでも有効距離は小さくなります。有効距離が充分長ければ、多少の悪天候でも観測が可能です。
 RIEGL LMS-Z420iで自然地形を観測する時、有効距離のカタログスペックは「反射率80%の自然物ターゲットに対して」1000mまでです。実際の反射率、かすかなモヤを考慮して、600mまでは大丈夫と考えています。

・各種地上型レーザースキャナ

 数理設計研究所は、有効距離 350mから2500mまでの、各種レーザスキャナを運用しています。最近市販されはじめた長距離型 RIEGL LMS-Z620、LPM-321は大いに興味を引かれます。

有効距離の考え方
各種のレーザスキャナ装置

湾を挟む絵画地形を測定

谷間地形 こうした地形は近づけば一部分しか見えなくなる。
最大距離500m

上の写真の地形のサーフェース・モデル
 

宮崎県塚原ダム下流崩壊地

塚原ダム下流崩壊地
観測データ全景

距離600m
山頂の樹木形が判別できる

● 測定速度

・速いスキャナ、遅いスキャナ

 レーザースキャナには高速型と低速型があります。高速型は毎秒数百〜一万点以上を測定します。低速型は毎分100点くらいです。
 高速長距離型レーザースキャナの代表、RIEGL LMS-Z420i は、600〜1000m以内の範囲を、毎秒数千点から1万点を測定します。この速度で水平角10°の範囲を最小角度ステップ(0.01°)で測ると2分半かかります。この時、500m先のデータ間隔は10cmくらいです。
 RIEGL LPM-2K は低速超長距離型レーザースキャナです。毎分100点くらいを測定し、測定できる範囲は2000mを超えます。1km以上を安定して測定できる高速型レーザースキャナはなく、低速でも他に代え難い機器です。新潟県中越地震の崩壊地測定、中国では長江を挟んだ対岸測定、フィリピンではギンサウゴン崩壊地(全長4km)の測定に活躍しました。

・高速性と分解能

 高速測定は時間の節約の他、精度において大きな意味があります。高密度で測った点群からそれが地表か、樹木か、建物かを容易に判別できます。一点を狙わないで全体を観測するレーザースキャナの精度評価では、各点の距離精度、角度精度とともに、何を測ったか、目的の対象を観測できたかの確認が重要です。
 崩壊地を26分測定して、1200万点のデータで表すと、600m先の樹木の形状が判別できます。低速スキャナではまねのできない点数です。低速スキャナでは別途写真との比較やデータ処理、部分的な詳細測定データから樹木、家屋などを判定します。

地上型レーザースキャナの精度と分解能の検討 2007年砂防学会研究発表概要原稿
各種のレーザスキャナ装置

● 精度 

 レーザースキャナ測定データの精度をは、3つの観点から評価できます。
  1. 特定の一点の測定精度

     目標地点に反射体を設置、測定して、その中心位置を求めます。参照点測定は、この方法で実施します。
     反射体を測ったデータ数が数十から数百になるよう、距離によって反射体の大きさは適当に選択します。多数のデータ点群から反射強度の高いデータを抽出して、中心点を算出します。
     データの抽出と中心点の算出は、RIEGL RiSCAN PRO ソフトウェアは自動的に実行でき、そのアルゴリズムは比較的単純です。反射体のサイズ、形状が適当なら、数百メートル先の目標に対して、数センチ程度の精度が容易に得られます。
      
  2. 面精度

     データが数千から数万もある平面の、法線方向の精度は、数ミリ程度の誤差で求まります。参照点を測って再設置する精度は、これより低いので、動かない広い平面を観測すると、参照点の精度検証に使えます。
     連続測定では、平面の法線方向変位は、数ミリの精度で観測できます。
     
  3. 一般的な精度

     平面でもなく、目標に反射体を設置しない一般地形の各点の座標精度は、レーザースキャナの基本性能として考えます。
     精度は、距離精度と水平、垂直の角度精度に大きな差があります。Riegl LPM-2K を例に、カタログ値から検討します。
  • 距離精度

       距離精度=±( 25o+距離×20ppm )
     とされる。
     これは、1000mの測定距離なら、
       距離精度=±( 25o+1000m×20/1000000 )=±45o
     となり、2000mなら±65oとなる。
     
  • 角度精度

     角度精度には2つの要素がある。1つは、経緯台の位置精度であり、もう1つはレーザビームの広がりに由来する。

     経緯台の位置精度

     経緯台の水平、垂直の位置精度は、0.009°( 33″)である。
     (LPM-2Kを制御する角度単位は、gon( Grad )で、400gon=360°である)
     ( 0.009°という半端な値は、0.01gonがオリジナルである : 0.01gon = 0.009°)
     0.009°は、1000m先では 16pに相当する。
    角度単位換算表

     レーザビームの広がり

     レーザビームは距離とともに広がる。地表に当たり、広さを持つスポットから1つの値をデータとして取得する。広がりはビーム径として表される。
     LPM-2Kでは 1.2mrad( 0.07°、4.2′)である。
     1000m先でのビーム径は、1.2m程になる。 
     
     以上の経緯台の位置精度とレーザビームの広がりの評価から、LPM-2K の各点の角度精度は±0.045°( 2.7′)程度である。1000m先の距離にして±0.8mである。

     RIEGL LMS-Z420i では、ここで述べた LPM-2K に較べて1桁小さい誤差で測定できます。更に角度誤差を縮小するためには、一点の座標値は、周辺の多数の測定データから算出する測定法と計算法を、目標の状態によって工夫します。

● 霧と有効距離

 濃い霧の中では、測定は困難です。濃い霧どころか、人の目にはかすかなモヤにしか見えないものでも、測定可能な距離はかなり制限されます。

 霧と靄の影響について、リーグルのレポートがあるので、簡単な訳を記します。
Maximum Range as a Function of Visibility
視界と有効距離
レーザー距離計で測定可能な最大距離は、視界に強く依存します。
RIEGLのパンフレットのデータは、20kmの視界がある澄んだ空気に基づいた値です。
視界が悪い場合には大気中で減衰し、最大距離は図中の縦軸で示すパラメータに沿って短くなります。
RIEGL General Information GI006 (10/94) 略訳 NAGURA Hiroshi

 測定可能距離の長いレーザスキャナほど、霧の影響を受ける割合が高くなります。
 回転ミラー型レーザスキャナ、LMS-Z210についての言及はありませんが、経験上、経緯台型よりも影響を受けやすいように思われます。LMS-Z210での測定例

  山岳地帯では、毎朝霧が発生するところも少なくありません。そんな土地での測定を予定する場合には、霧への注意が必要です。
 たった1回の現象を追う場合や、定期的に時間を決めて測定する場合には、測定時刻の設定に注意をしなければなりません。

● 測定対象の反射率と有効距離
 レーザレーダは、レーザの反射光を測定して距離を得ますから、測定対象が光を全部吸収したり、鏡のように全反射して戻ってこない場合には測定できません。水面は赤外レーザを吸収して測れない例です。
 水面を除いて、自然の地形の中には完全な吸収体や全反射体は少ないのですが、岩、土の色によって反射率は随分違いますし、濡れた土砂なども反射率は悪くなります。
 雨の中で測定できることも、地上からのレーザスキャナ測定の特長ですが、一般に有効距離ぎりぎりになると濡れた対象は測定しにくくなります。
Reflectivity of Various Surfaces / Materials
色々な表面、物質の反射率
Maximum Range versus Reflectivity of the Target
測定対象の反射率と有効距離の関係

● ビームの広がり

  •  レーザビームが距離と共に広がり、それが斜めに地面に当たると細長い楕円になります。
     極端な例ですが、地面から5mの高さにレーザスキャナを設置して、平らな地形の100m先のレーザスポットがどんな形になるかを示します。



     赤い丸がレーザスキャナ、赤い線がレーザビームで、横から見た図です。
     地面に対するレーザの入射角は3°以下であり、実際にはこういった条件での測定にならないようにしなければなりません。地面が平らならレーザ光は正反射して、帰ってこない場合さえあります。

  •  これを上から見て、地面に当たる部分を拡大すると次のようになります。



     ビームの広がりを比較的大きく設定しました(3mrad)が、比較的使われている Riegl LMS-Z210 (回転ミラー型)はこの値です。
     図の楕円は、幅30p、長さ6mになります。

● レーザビームの分布

 ビームの広がりで記した通り、レーザビームは針のように細いものではありません。
 その中の光の強さの分布も一様でもありません。
 右の図は、微小な反射シートを Riegl LPM-2K で面測定したデータの、反射率の分布を表してします。カタログ値のビーム径 1.2mrad は、小さな正方形8個分くらいの大きさになります。
 これから、ビームの光は横長に、いくつかのピークをもって分布することがわかります。
 1点を狙って測定する場合には注意が必要です。
  レーザビーム形状の検証

● レーザの反射強度と距離

 反射ビームの強度は、距離データにも影響を与えます。反射率が高い対象では、距離が短く出がちな事は広く知られています。
 これは、レーザレーダが反射光がある一定の値(閾値)に達した時間を測定するためで、強い反射ではピーク全体が大きくなって、閾値に達するのも早くなるためです。
 Riegl LPM-2K で測定すると、これを自動的に調整していることがわかりますが、調整が充分にうまく機能しているとは言い難く、100m以内の距離で測量用の反射シート(小さいものでも)を測定すると、20cmを超えて実際よりも近いデータが得られます。
 ビームの中央部では調整は比較的よくおこなわれ、むしろ周辺部分でこの傾向があります。 
 
Riegl LMS-Z210 の測定データにおける反射率の異常の検証

● 測定モード

 レーザスキャナの機種によるが、反射してきたレーザビーム・パルスが複数の場合に、どれをデータとして採用するかを選択することができるものがあります。最近の地形測定では、多くはこのタイプが使われるようです。中間の障害物の影響をより少なくできるためです。
 レーザビームの広がりのため、その一部は手前にある電線で反射して返り、残りはその後ろにある地面に反射して返るという場合があります。
 この場合には2つのレーザ反射パルスができます。

 当研究所で使用するレーザスキャナには、3つのモードがあります。
  • 第一目標物モード ( First Pulse Mode )
    反射パルスの内、距離の一番近いものをデータとする。
  • 最強反射目標物モード ( Strong Pulse Mode )
    反射パルスの内、反射光強度が一番大きいものをデータとする。
  • 最終目標物モード ( Last Pulse Mode )
    反射パルスの内、最も遠いものをデータとする。
 上の例で、電線を測定したい場合には「第一目標物モード」を用い、地形を測定したい場合には「最終目標物モード」を使うとより確実な測定ができます。
 広葉樹林など反射率の高いものの樹冠を測定しようとすれば、「最強反射目標物モード」を使うことができます。

 「最終目標物モード」を使うと最大測定可能距離が短くなる事もあり、対象地域の状態をよく把握してからモードを決めなければなりません。
Last Pulse Measuring Technique
RIEGL Last Pulse距離計は、悪い視界の条件のもとでさえレーザー距離測定を可能にする。レーザビームが部分的に前にある他の目標に当たったり、貫通したりしても、距離計は最遠の目標の距離を測定する。

図は典型的な状況を示す。
レーザー・パルスが発射され、窓ガラスを貫通し、濃い霧を抜けて、ワイヤー・フェンスを通り、最後に固い目標に達する。
それぞれの目標は反射光を発生し、それらは距離計の閾値を超え、データとして採用されるレベルに達している。
従来型のパルス時間型距離計は、最も近い目標の距離を提供する。上記の例では窓ガラスのように。
近距離目標を無視する技術は、近くの目標からの反射光を無視することを可能にする。
その結果、次の目標、つまり濃い霧のデータが表示される。

一方、最終目標測定技術は、最後目標以外の不要な目標からの反射光を無視する。
ただし、最遠目標とその手前の目標の距離は2m離れていなければ、識別することができない。
RIEGL General Information GI009 (6/97)  略訳 NAGURA Hiroshi

● 可搬性

 レーザスキャナによる測定では、見えないものは測れません。良い測定地点の選択は、レーザスキャナ・システムで良いデータを得るための重要な要素です。
 対象地形が陰なくよく見える地点を探して、測定しなければなりません。

 レーザスキャナの有効距離が大きければ、測定地点は広い範囲から選択できます。しかし視界の開けた絶好のポイントがあっても、そこに機材を持ちこめなければ測定はできません。
 MAD3D機材はポータブルで、2人で持ち運びができるので、車が入れない場所でも山間地でも測定ができます。
 自在に持ち運べる事は測定を容易にするだけでなく、データの有用性を高めます。

LMS-Z210システムの運搬

● 三脚と設置

 レーザスキャナは重く、Riegl LMS-Z210 で13kg、LPM-2K では 14.6kgあります。
 このため三脚にかかる荷重は大きく、しっかりしたものを用いなければなりません。
 更に、LPM-2K では、回転モーメントの大きな本体が回転運動を行うために、動作中の振動があります。
 広い範囲の測定では、長い時間この振動を受けるため、三脚の脚をよく踏み込んであっても動いてしまう場合があります。
 測定作業が一段落した時や測定終了時に、レーザスキャナの姿勢に変化がないかをよく確認する必要があります。

● 複数の測定地点

 レーザスキャナによる測定では、見えないものは測れません。
 一ヶ所からの測定では全体が捕らえられない地形では、複数の測定地点から測定して陰になる部分を無くさなければなりません。
 そうして得た複数の面データを、1つの座標系に変換して全体像を得ます。
 MAD3Dシステムでは、2qに及ぶ範囲のデータを高精度で自動変換します。



谷間の地形は測定する角度を変えると全容がわかる
距離1800m

● 変化を追う測定

 地形形状が変動しようとしている時に、変化を随時追跡する測定ができます。
 MAD3Dでの連続的な測定には、いくつかのモードがあります。
  • 毎秒数回から数十回のライン断面測定
  • 1回あたり数分で地形データを取得し続ける面測定
  • 一点を絶えず測定し続ける一点測定
  • 最初にセットした点や面を繰り返し測定する巡回測定
 これらの測定から得たデータは、測定毎の差分値を算出し、変化量を得ます。

 月単位、年単位で変化する地形の形状を追跡する測定もあり、月毎、年毎に測定して差分を算出し、変化量を得ます。

 変化量は数値として、あるいは図化して提供します。
 この図はDXF形式なので、ユーザが汎用CADで扱うことができます。
 数値はCSV形式に変換できるため、表計算ソフトウェアで扱うことができます。

● 測定データの解析

 植生や、地形の手前にある比較的小さな、或いは細い構造物は、地表形状を得ようとするための障害になる場合があります。一般に、地表データを得たい場合には「最終目標物モード ( Last Pulse Mode )」で測定する事が行われています。
 「最終目標物モード ( Last Pulse Mode )」と「最強反射目標物モード ( Strong Pulse Mode )」の両方で測定して得たデータから地表面、樹冠面を推定して、樹木の全体量を得られます。
 地上からの測定では、1つの地域をいろいろな角度から測定できますから、そのデータから植生と地表データを分離することができます。

● 地形の立体模型

 地形の実物模型。作ってみると案外な発見があります。
 → 立体模型の制作 
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∫MAD 叶迫攝ン計研究所 Mathematical Assist Design Lab. 1997-2007