小さな地形形状のレーザスキャナ測定

海岸の岩をサンプルとして

2001/11/12 数理設計研究所 名倉 裕

・比較的狭い地域をセンチ単位の精度で測定する事は、広い地域の測定とは異なる困難がある。
 距離精度、角度精度については、レーザスキャナ固有の精度に制限を受けるが、現在ではセンチ単位の精度は機器を選べば容易に得られる。
 更に、レーザビームの特性の解析によって、データ精度を機器固有の精度から更に高められる可能性がある。

・小さな自然地形の特徴は、広い山野形状と違って、安息角に近づくというような滑らかさを持たない事である。
 30cmほどの岩盤の突出は自在な姿をとる。10cmほどのものならなおさらである。
 空に向かって突き出したり、東西南北自在な方向に向きながら重なる。
 ここでは海岸の岩の測定を例として、比較的狭い範囲の測定とデータ処理を紹介する。

畳岩のレーザスキャナによる形状測定 

  1. 測定対象 畳岩
  2. 測定条件
  3. 測定結果
  4. 全体像
  5. 分解能の検討
  6. 特徴抽出
  7. 考察
  8. 測定諸元
拡大写真
図1-1 畳岩全景

図1-2 畳岩を測定中のレーザスキャナ

1.測定対象 畳岩

 山口県阿武郡須佐町高山にある「須佐のホルンフェルス」として知られる畳岩を測定した。(地図:国土地理院 1/25,000地形図:須佐(延伸北北東)から引用、マーク)
 海に向かって100m余突き出して、高さは10mを超える。
 (左図1-1:「須佐のホルンフェルス」畳岩全景)

 この測定は、岩の壁から20mの距離の、テーブル状の平らな岩の上から、見える範囲を、レーザスキャナで形状測定したものである。
 ・左写真の赤丸の地点が測定地点
 ・左下は測定風景

 高い精度の形状を得るためには距離を10m以下としたかったが、岩の高さが10mほどあり、その上部まで測定するために約20mとした。
 近づけば上部へのレーザビーム入射角が小さくなり、陰になる部分が増えるためである。
 (左図1-2:畳岩を測定中のレーザスキャナ)

2.測定条件

 レーザスキャナは、Riegl LMS-Z210 型を用いた。この機器は回転ミラー型で高速の測定ができ、この1測定の要した時間は数分である。経緯台型なら数時間を要する。

 水平、垂直方向ともに0.12gon( =0.108°=6.48′=1.88mrad )とした。
 これは最も近い部分の距離20mでは、ビームに垂直な面では 3.8cmおきの測定になる事を示す。
 実際には岩面はレーザビームに対して斜めであり、測定間隔はより大きい。

 レーザビーム径は6cmになり、ビームを重複させた測定とした。
 レーザビームはその径の中で均一に分布せず、中央部が強いため、重複させる事によってより詳細を得る事ができる。

 以上の測定条件から、形状精度は4〜5cmになると考えられる。
 これ以上を期待するなら、より近い距離で測定する、測定方法を工夫する、レーザスキャナに高精度なものを使う、といった方法が考えられる。

3.測定結果

拡大図
図3-1 全データの反射率イメージ
 左に反射率イメージ図を示す。
 測定対象の全容が分かりやすい。
 ここから必要な部分のデータを切り出してデータ処理をした。

原測定データ 001_12.3dd

4.全体像 主な測定対象範囲の全体データ

4-1.写真、反射率イメージ図

 原測定データから、畳岩一部を、岩の最上部まで入るよう切り出した。
 この範囲ではデータ密度が適度にあり、細かい構造を得る対象になると考えた。

拡大写真
図4-1 主な測定対象形状
 写真左は切り出した部分を示す。

データファイル 001_12_T.3ds
001_12_T_SP.csv
001_12_T.dxf
設定データ数 100,163
287
349
有効データ数 97,856
拡大図
図4-2 反射率イメージ
 切り出した部分の測定データから、反射率イメージ図。
 赤外線写真と似た像が得られる。
 反射率を含めた形状解析法は、現在検討中である。
拡大写真
図4-3 畳岩の大きさ
人との比較として
 人の立つテーブル状部分からの高さは約10m。

4-2.鳥瞰図

10cmメッシュ鳥瞰図
図4-4 10cm縦断線鳥瞰図
・10cm縦断面線(左上)と等高線(左下)による鳥瞰図を示す。
 クリックして示される拡大図は、縦断線と等高線をマージした図である。
 こうした図は、全体の形状を把握するために有用である。

- データ処理 -

001_12_T.3ds
File3D
001_12_T2_RX-90.3ds
Make3D
001_12_T2_RX-90_BCF10.3ds
Contour3D
01_12_T2_RX-90_BCF10_01.dwg

図4-5 10cm等高線鳥瞰図

5.分解能の検討 小範囲データ

 データ密度と分解能について検討するため、全体像から更に狭い範囲を切り出した。
 垂直な形状ではデータが扱いにくいため、90°回転して水平にして表した。

拡大図
図5-1
解析範囲の切り出し部分
 左の写真はデータを切り出した部分を表す。
 対象形状は、縦 2.1m、横 2.8m の範囲。

 データ密度 700個/u 7個/10cm四方
 縦横平均して26個/mとなった。
 水平方向、垂直方向に、平均して4cm毎にデータが存在する。

データファイル 001_12_T3.3ds
001_12_T3_SP.csv
001_12_T3.dxf
水平化データファイル T3_RX-90.3ds
設定データ数 4,118
58
71
有効データ数 4,118

5-1.線図

 垂直よりも上部はいくらか手前に張り出した、オーバーハングした形状を90°回転して水平にした。
 視覚的な特徴の捕捉について試すため、これを線図、サーフェース図で示す。

PDF図
図5-2 測定メッシュによるTIN図
・測定メッシュによるTIN図
 この図から何等かの特徴を得るのは困難である。

- データ処理 -

T3_RX-90.3ds
File3D
>AutoCAD
T3_RX-90_VTIN.dwg
PDF図
図5-3 5cmメッシュ図
・5cmメッシュ図
 TIN図よりも形状を観察しやすいが、やはり特徴を得るのは難しい。

- データ処理 -

T3_RX-90.3ds
File3D
>Make3D
>Contour3D
>AutoCAD
T3_RX-90_005.dwg
拡大図
図5-4 サーフェース図
・サーフェース図
 使い方によっては、視覚的な特徴を得やすく、非常に有用な表現法だが、ここでは特徴を捉えにくい。

- データ処理 -

T3_RX-90.3ds
File3D
001_12_TX_R-90.dxf
>ISP GeoForm

6.特徴抽出 データ処理、加工

 形状からその特徴を得るための、機械的な処理を試みた。

6-1.突出部の削除

 1点だけ突出したデータや窪んだ点を削除した。
 これによって、おおまかな形状は見えやすくなるが、細部は損なわれる。

PDF図
図6-1 凹凸を整理した形状のTIN図
・測定メッシュによるTIN図

独立凸点、凹点を削除する処理を施したした形状を示す。
データ間隔は平均4cm程度なので、10cm程度の凹凸は明瞭になる。

- データ処理 -

T3_RX-90.3ds
File3D
T3_DB0_10.3ds
File3D
>AutoCAD
T3_DB0_10.dwg

6-2.差分抽出

 形状の細部だけを取り出す事を目的とした処理をした。 

PDF図
図6-2 平滑化処理後の5cmメッシュ図
・平滑化処理
 左図は、原データを平滑化したものを5cmメッシュ図として示した。

※平滑化は、各点の高さ方向のデータを、その周辺を含んだ代表値として再定義したものである。
 周辺の大きさ、代表値のとり方で、得られる形状は異なる。

Sw5-1_005.dwg
PDF図
図6-3 差分データの5cmメッシュ図
・差分処理
 原データと平滑化データの差分をとり、5cmメッシュ図として示した。

 立った部分は急勾配で、平滑化で形状が損なわれた事を表す。
 ここでは特徴は現れない。

※ここでは差分の基礎データとして、平滑化していない原データを用いたが、平滑化の程度や、差分をとる2つのデータの平滑度を変えると、より大きな形状だけが得られる。

Df_o-5_1_005.dwg
PDF図
図6-4 差分データの1cm等高線図
・差分データの等高線図
 差分データを1cm等高線として表した。
 緑色は、差分が1〜ー1cmの部分を表し、レーザスキャナの距離精度を下回る。
 そこで緑の部分を削除して次に示す。

PDF図
図6-5 差分の絶対値が2cm以上の部分の1cm等高線図
・差分の大きい部分の等高線図
 上で差分データを1cm等高線として表した後、絶対値2cm以上の等高線だけを表示した。

 ここで何等かの傾向が見えたとは言い難い。
 差分処理(図6-3)の項で記したように、平滑化の方法によって得られる形状は変わる。
 各種の条件で試すべきだが、ここでは実施していない。

 こうした特徴を抽出した後、全体の傾向を求めるためには、周波数解析等の方法に依るのが適当だろう。

7.考察

7-1.大きな特徴
10cm以上の大きさの形状については、データ処理を進めて、特徴を捉える事は可能と思われる。
20mの距離では、Riegl LMS-Z210を以って5cm以下の細部を知るのは難しい。
7-2.小さな特徴
10mの距離から測定すれば、レーザビーム径は小さくなり、角度精度は倍になる。データ密度は4倍になり、得られる情報は2倍よりも大きくなる。
2cm程度の特徴を把握できる可能性がある。
7-3.小さな形状と精度
2cm以下の形状測定は、現状では難しい。
レーザスキャナ Riegl LMS-Z210 の距離誤差は±25oである。
ビーム形状、形状データを利用した測定法の研究から、精度を上げる必要がある。
精度が高くなれば、測定が容易になり、応用範囲も増える。
7-4.特徴と応用
形状の特徴は、その応用方面によって必要な要素が異なると考えられる。
それぞれの方面のために、形状のどのような特徴を抽出しなければならないかを知る必要がある。
7-5.特徴と数値 
形状の色々な特徴を抽出するために、その特徴がデータに含まれるどのような数値的特徴と結びつくかを求めなければならない。
数値的特徴とは、個々のデータ点固有値、その周辺の小範囲の特徴、更に広い中範囲の特徴、全体の特性を言う。
7-6.特徴と誤差
特徴を抽出しながら、ノイズ成分(誤差)を抑制しなければならない。
幾何的、統計的、周波数解析的手法が有用である。
7-7.特徴と連続性
形状の特徴は、それを抽出しただけでは2次元平面上に散在するだけである。
これらのデータは、その連続性を求めなければならない。
このため、周波数解析等、信号処理の一般的な手法が有用である。
実際の形状は3次元から成るが、ほとんどの場合に2次元平面に投影、あるいは展開して扱う事ができると考える。
7-8.特徴抽出と測定機器の誤差
特徴とその連続性を求める操作の中で、必要とされる測定精度は決定される筈である。
現状では、測定機器の精度に多くが拘束されている。 

8.測定諸元

・場所、日付、人員

場所 山口県須佐町海岸 ホルンフェルス岩
測定日付 2001/05/15
測定者 数理設計研究所 名倉、玉置、矢澤
処理日付 2001/11/06
処理者 数理設計研究所 名倉

・機器、ソフトウェア

レーザスキャナ Riegl LMS-Z210  
測定ソフトウェア Riegl 3DRiSCAN  
解析ソフトウェア データ処理 数理設計研究所 MAD3D
 ・File3D
 ・Make3D
 ・Contour3D
  2Dビューワ Riegl 3DRiSCAN
  3Dビューワ
DXF-DWG変換
Autodesk AutoCAD
  サーフェース
ビューワ
ISP GeoForm

・測定条件

測定対象
測定距離
ホルンフェルス岩部分
高さ約10mのほぼ垂直の岩壁
測定地点から最近点まで約20m
測定ステップ 水平 0.12 gon
垂直 0.12 gon
データ数 全データ数 1,408,000
 縦 640
 横 2,200
 有効データ数 863,870
データ順 上から下へ
右から左へ
データ数値 ・距離(r):m
・角度(φ,θ):Degree
・距離0は、測定不能値
・反射率は、0〜255の間の整数値

・データ一覧

 オリジナル・データ以外は、大範囲トリミング・データを基にしたもの。

Riegl形式 オリジナル・データ 001_12.3dd
Riegl形式 トリミング・データ 001_12_T.3dd
MAD3D形式 トリミング・データ 001_12_T.3ds
CSV形式 点データ
球座標(r,φ,θ,Albedo)
001_12_T_SP.csv
CSV形式 点データ
XYZ座標(x,y,z,Albedo)
001_12_T_XYZ.csv
DXF形式 点データ 001_12_T_Point.dxf
測定順に構成したTINデータ
(Face)
001_12_T.dwg

∫MAD 数理設計研究所 Mathematical Assist Design Lab. 1997-2001